赤字続いても「ユーザー増やす」 強気のLINEモバイル、ソフトバンク回線を提供開始:多様な割引キャンペーンも展開
LINEモバイルがソフトバンク回線の提供を開始。NTTドコモ回線は引き続き提供する。ソフトバンク回線利用者への割引キャンペーンなども充実させる。
MVNO(仮想移動体通信事業者)のLINEモバイルは7月2日、ソフトバンク回線の提供を始めた。今年3月にLINEとソフトバンクが資本・業務提携を結んでソフトバンク傘下に入ったことを踏まえた。ただ、今後もNTTドコモ回線の提供は続け、「端末やネットワークになじみがある方を選んでほしい」(嘉戸彩乃社長)という。
ソフトバンク回線にも従来と同様、「LINEフリープラン」(月額500円〜)、「データフリープラン」(月額1110円〜)、「MUSIC+プラン」(月額1810円〜)――の3プランを提供する(価格は全て税別、以下同)。
ただ当初は、「データフリープラン」「MUSIC+プラン」で提供している、「Twitter」「Facebook」「Instagram」など主要SNSが使い放題になるサービス「データフリー」(同日付で「カウントフリー」から名称変更)は未対応。今秋以降の対応を予定する。
代替策として、ソフトバンク回線の新規ユーザーと、同回線に変更した既存ユーザーに対し、プランを問わず7〜8月のデータ容量を2倍にする。
多様な顧客獲得施策を展開
また、ソフトバンク回線の利用者獲得に向け、7〜8月に回線を変更した既存ユーザーの変更手数料(3000円)を無料にする。ソフトバンク回線の通信速度を公式Webサイト上で公開し、月に1度でも1Mbpsを下回った場合は同回線のユーザーに1GBのデータ容量をプレゼントする取り組みも行う。
「MVNOが市民権を得てきた現在も、『電波がつながりにくそう』『遅そう』といったイメージは根強い。こうした不安を払拭(ふっしょく)したい。ある程度の速度を求めるユーザーはソフトバンク回線を使ってもらえれば」と嘉戸社長は狙いを説明する。
利用する回線を問わず、7〜8月に音声通話SIMを新規契約したユーザーの月額料金から、6カ月間にわたって900円を割り引く施策も行う。「当社は“欲張り”。バリューを保ちつつ選択肢を広げることで、より多くのユーザーを獲得したい」(嘉戸社長)という。
嘉戸社長はこのほか、実店舗を今夏中にも100店舗に増やす計画を発表(現在は69店舗)。「SIMロック解除などの各種設定を難しいと感じる人も多いため、対応できる体制を整備たい」とした。
初期投資額がかさむのは当然
ただ官報に掲載された決算公告によると、LINEモバイルは2017年12月期に営業損益・純損益ともに約30億円の赤字を計上。今期さらに顧客獲得施策を展開することで、赤字幅が悪化する恐れはないのだろうか。
報道陣による「赤字体質から抜け出せないのでは」との指摘に対し、嘉戸社長は「通信業界では初期投資がかさむのは当然。(しばらくの間は)もっと赤字になってもいいくらいだ」と強気の姿勢を見せたが、黒字転換する時期のめどは「非公開」と答えた。
現在のLINEモバイルへの出資比率は、ソフトバンクが51%、LINEが49%。ソフトバンクが大きな影響力を持つが、これまでMVNE(仮想移動体通信サービス提供者)としてドコモ回線利用などを支援してきたNTTコミュニケーションズとの関係にも「特に問題はない」(嘉戸社長)という。
今後は、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIのユーザーが電話番号だけでコミュニケーションできるアプリ「+メッセージ」に対応する可能性もあるという。嘉戸社長は「もしMVNOに開放された場合は、ユーザーのニーズを踏まえて導入を検討したい」と展望を話した。
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