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なぜカシオの「余り計算機」は、いまの時代でも売れているのか:あの会社のこの商品(3/5 ページ)
調剤薬局や物流会社の倉庫では、電卓で余りを計算することが頻繁にあり、効率化が求められていた。このようなニーズから生まれたのが、カシオ計算機の「余り計算電卓 MP-12R」だ。特定のユーザーを対象にした専門的な機能を搭載したニッチな電卓の、誕生までの歩みを追った。
たった1回の計算で余りが求められる
開発は2016年にスタート。ソフトはイチから開発した。では、どのように余りが計算できるのかを説明する([]内は押すキーを表す)。
例えば、1シート14錠の薬を、1日3回・1回1錠・90日分処方するとしよう。この場合、19シートと余り4錠を処方しなければならないが、従来の電卓だとこの結果を求めるのに、
(1) 3(錠)[×]90(日)=答 270(錠) ※3(錠)は1日の処方量
(2)270(錠)[÷]14(シート)=答 19.28……(シート)
(3)14(錠)[×]19(シート)=答 266(錠)
(4)270(錠)[?]266(錠)=答 4(錠)
と計算回数が4回になる。しかし余り計算電卓を使うと
(1)3(錠)[×]90(日)[÷余り]14(錠)=答 19シート余り4錠
と計算回数がたった1回で済む。新設された[÷余り]キーを使うだけで、効率的な計算が可能になるのだ。
既存の一般電卓でも余りを求めることはできる。ただ、1日のうちに何度も余り計算を行わなければならないとなれば、既存の電卓では面倒な上に非効率。特に調剤薬局は、1日の調剤件数が多く間違いも許されないので、計算を正確・簡単に済ませたいというニーズは強いものがある。
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