なぜカシオの「余り計算機」は、いまの時代でも売れているのか:あの会社のこの商品(2/5 ページ)
調剤薬局や物流会社の倉庫では、電卓で余りを計算することが頻繁にあり、効率化が求められていた。このようなニーズから生まれたのが、カシオ計算機の「余り計算電卓 MP-12R」だ。特定のユーザーを対象にした専門的な機能を搭載したニッチな電卓の、誕生までの歩みを追った。
「商品化してもいいのではないか」という結論に
関数電卓を使えば、余りは計算できる。だが、余り計算のためだけに使うには、高性能すぎる上に高価だった。
ところが、同様の問い合わせは物流会社のみならず、調剤薬局からも来ていた。むしろ、物流会社よりも多く問い合わせがあったほど。このようなことから、国内は調剤薬局と物流会社、海外は物流会社を対象に、需要を確かめる調査を行うことにした。物流会社の調査では、最初に問い合わせてきた会社のヒアリングも試みた。
まず調剤薬局を調べたところ、錠剤や粉薬の処方で単位外の端数や服用成分の量を計算する際に電卓を使っていることが分かった。
物流会社の場合は当初、一般的な物流会社では最新のWMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)を導入しているケースが多いことから、電卓を使う必要性は低いと考えていた。しかし倉庫の作業者に聞くと、電卓を「使う」ということだった。
詳しく話を聞くと、調達物流(生産に必要な資材や原材料、部品を生産現場に運ぶ活動)と販売物流(商品を顧客まで届ける活動)の2つは、倉庫の作業者が現場で手計算を強いられることがあることが分かった。特に納品先が在庫を持たないようにしている場合は、ジャストインタイム(必要なモノを、必要なときに、必要な量だけ届ける)で対応しなければならず、扱い品目によってはピッタリ何箱とはいかずに端数が出る。そのような場合は、箱から何個ピッキングすればいいかを現場で計算して求めなければならないのだ。
調剤薬局と物流会社を調査し、以上のような電卓の利用シーンが確認できた同社は「商品化してもいいのではないか」という結論に至った。特にコンビニよりも多いといわれる調剤薬局での使われ方が確認できたことから、ある程度は需要が見込めると判断した。
関連記事
- ホンダのロボット芝刈り機は、日本でも普及するのか
欧州でロボット芝刈機が普及しているが、ホンダもロボット芝刈機「Miimo(ミーモ)」を投入した。あまり聞き慣れないロボット芝刈り機とは、どんなモノなのか。また日本でも発売されたが、国内市場で普及するのだろうか。 - なぜ「スーツみたいな作業着」をつくって、しかも売れているのか
スーツのような作業着「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」が売れている。製造しているのはアパレルメーカーでもなく、作業着メーカーでもない。水道工事などを行っている会社がつくったわけだが、なぜこのような商品を開発したのか。その狙いを聞いたところ……。 - なぜ伊藤忠は18年ぶりに「独身寮」を復活させたのか
伊藤忠が18年ぶりに「独身寮」を復活させた。業績低迷を受けて、2000年に社有の寮を売却したのに、なぜこのタイミングで建てたのか。建物は7階建てで、部屋は361室。国内最大級の寮のナカはどうなっているのかというと……。 - 47都道府県のポテチが売れている、開発の狙いは?
カルビーは各都道府県ならではの味を再現したポテトチップスを発売した。観光客向けのお土産ではなく、地元の住民に向けてつくったという味は、普段ポテトチップス売場に足を運ばない人たちが買っているという。誕生の裏側に迫ってみた。 - 人気の「コンパクトホットプレート」、開発の舞台裏に迫る
家電は高性能・高機能だけでは売れない。特に女性がメインで使う調理家電は、その傾向が強いといえる。BRUNOの「コンパクトホットプレート」は、ユーザーの多くが女性。一体、何が女性を引きつけているのだろか? 女性人気の高いホットプレート誕生の裏側に迫った。 - ミズノの作業用シューズが、実は売れている
現場の作業者などが作業中に履くプロテクティブスニーカーを、ミズノが発売したところ、当初計画を上回る売れ行きを示している。意外とも思えるヒット商品は、どのようにして誕生したのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.