EdTechで働き方は変わるのか?:市場の現状と課題(2/4 ページ)
「EdTech」とは「Education(教育)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語である。インターネットなどITの発展により、時間や場所の制約がなくなり、より双方向での学習や個々に合わせた学習が可能となったが、市場としては課題もある。EdTech市場の現状とこれからの発展に向けた課題について考察する。
MOOCの拡大と課題
前述の通り、インターネットを活用したEdTech関連サービスの中でも、注目を集めているMOOCは、国内では東京大学や京都大学、海外ではハーバード大学やマサチューセッツ工科大学など、世界中の大学の講義が受講できる。日本の代表的なMOOCプラットフォームとしては、先に紹介したgaccoなどがある。gaccoでは、講義を受けるだけでなく、同じ講義の受講者や講師とオンラインでの意見交換もできる。
世界中で利用者を着実に増やしているMOOCではあるが、課題も多い。1つ目の課題は低い修了率の改善である。MOOCを利用したオンライン講座の修了率は5.5%と非常に低い(edX『HarvardX and MITx:Four Years of Open Online Courses Fall 2012-Summer 2016』より)。無料で、受講登録も手軽にできる一方、講義の内容が専門的なこともあり、すぐに受講をやめてしまう利用者が多い。
また、オンライン講座はオフライン講座と比較して受講者の学習効果が低いことも指摘されており(Udacity 『Udacity's Lesson Learned』より)、コンテンツの内容やその提供方法ついての改善が求められる。
2つ目の課題は、ビジネスモデルの確立である。受講料無料を前提としているところが多く、講座の有料化は難しい。そのため、例えばgaccoでは有料の対面講座を設けるほか、官公庁、自治体、企業、学校などの法人向けに研修パッケージを開発することで収益を得ている。しかし高額なシステム費用などから、現状では十分に収益化ができているとは言い難い。海外のMOOCサービスでは、有料での講義や修了証を発行するほか、専門家向けの学習プログラムを開発し、修了者を企業に紹介する人材マッチングサービスなどによって収益を得ている「Udacity」などもある。
しかし、いずれのサービスもMOOCの講座修了者の増加なしには、収益の拡大は望めない。そのため、受講者の増加と同時に、低い修了率を改善していく必要がある。仮に利用者が順調に増加したとしても、修了率向上という課題の解決なしに、MOOC関連市場の拡大は望めないだろうと筆者は考える。無料講座の修了率が低い一方で、一部で提供されている有料講座の修了率は高いことから、将来的にMOOCの有料化が進むことも十分に考えられる。
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