中食参入も ジャガイモの需要変化を見てカルビーがビジネスをシフト:国内生産量は減少傾向だが(1/2 ページ)
カルビーはジャガイモの産地拡大に注力している。これまで北海道が大半を占めていたが、徐々に宮城県など他のエリアでもジャガイモの契約栽培が進みつつある。カルビーが調達量を増やすために躍起になるわけとは……?
2016年夏に北海道を襲った台風によってジャガイモ畑が大被害を受け、深刻な不作になった。その結果、ポテトチップスの製造量が激減してコンビニエンスストアやスーパーマーケットの棚から商品が消えた“ポテチショック”を記憶している人は多いだろう。
それを教訓にポテトチップスメーカー各社は原料であるジャガイモの調達に対する危機感がいっそう高まっている。ポテトチップス市場で7割以上のシェアを占める最大手のカルビーは、国産ジャガイモの調達量を増やすために、生産地の拡大や品種開発(関連記事)に力を注ぐ。
農林水産省のデータによると、15年の全国のジャガイモ生産量は240万6000トンで、そのうち北海道だけで190万7000トンに上る。実に日本のジャガイモの約7割が北海道で作られているのだ。それに比例して、カルビーの仕入れ先も北海道が8割を超えている。
北海道への依存は明確であり、調達のリスク分散を考えると他のエリアにも産地を広げることは必然なのである。
ただ、カルビーが産地拡大を急ぐ理由はリスク分散だけではない。消費者の需要増によって、より多くの加工食品用のジャガイモが必要になっているのだ。
ジャガイモの国内生産量は減少傾向にあるが、ジャガイモの国内消費量はそれほど落ち込んではいない。では、どうしているのかと言うと、フライドポテトをはじめとする輸入冷凍品でまかなっているのである。加えて、ポテトスナックやコロッケ、サラダなどに使う加工食品向けのジャガイモの需要は増えている。1985年に68万4000トンだったのが、2016年には149万9000トンと2倍以上になった。一方、生食用のジャガイモは、117万8000トンから61万トンと半減している(農水省調べ)。
カルビーの伊藤秀二社長兼CEOは「家庭での調理が減って、レトルト食品やコンビニの総菜などを買って食べる人たちが増えている。こうした消費構造の変化によって加工食品用のジャガイモへのニーズは今後も高まっていくだろう」と話す。
そうした変化をチャンスと捉えて、カルビーも今後はポテトスナック製品だけでなく、中食向け商品の開発を強化する可能性があるという。既に同社のアンテナショップ「Calbee+(カルビープラス)」においてフライドポテトの「ポテりこ」や「ポテチュロ」などを製造、販売している。今年1月には回転すしチェーン「スシロー」においてポテりこを期間限定で提供した。新商品の開発とともに、外食チェーンなど他社とのパートナーシップも検討したいとする。
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