ハラスメントを招いてしまう要因は「甲子園」と「水戸黄門」:次から次へと(1/3 ページ)
次から次へと現れるスポーツ界のハラスメント。 一般社会がこれだけコンプライアンスにうるさくなっているにもかかわらず、とどまるところをしりません。スポーツ界だけが腐っているのか? それとも……。
著者プロフィール:
増沢隆太(ますざわ・りゅうた)
株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役。キャリアとコミュニケーションの専門家として、芸能人や政治家の謝罪会見などをコミュニケーションや危機管理の視点で、テレビ、ラジオ、新聞等において解説している。大学や企業でのキャリア開発やコミュニケーション講座を全国で展開中。著書「謝罪の作法」他多数。
次から次へと現れるスポーツ界のハラスメント。 一般社会がこれだけコンプライアンスにうるさくなっているにもかかわらず、悪質タックルに始まり、レスリング協会、ボクシング協会、チアリーディングや体操と、とどまるところをしりません。
当初一部のだめな大学や組織の、一部の不心得な人物たちの暴走による特別な事件かと思いきや、次から次へと現れる新キャラも注目を集め、打ち止め感は全く見えない状況です。 スポーツ界だけが腐っているのか? それともそもそも私たちの一般社会の中に、ハラスメントを生む種があるのか? それどころかハラスメントを喜ぶ原因がないでしょうか?
(1)高校野球の病根
高校野球のすごさはその「番組」としての強さにあります。一期一会のトーナメント、つまり負ければ即敗退というルールは見る者に緊張感を与えます。高校創立来初出場だったり、カネにものいわせて選手補強する強豪高校を普通の公立高校が競り勝ったり、マスコミ注目の選手が実力を出せずに敗退したり、素晴らしい成果で早々とプロ入りしてスターになっていく過程。まさにドラマプロットの塊のような存在です。
結果として高校野球は紅白歌合戦と並ぶ歴史的キラーコンテンツとして君臨し続けています。テレビ中継にとどまらず、関連マーチャンダイズや出版含めた巨大ビジネスになってしまったことで、その影の部分について正面からの批判はしづらい状況できました。
しかしかつての日本の夏とは別ものとなった超炎天の酷暑の中、抜群の体力を持つ高校生ですら倒れるという環境。連投によってまだ成長期の子供である高校生の身体に深刻な影響を及ぼし、人生を変えてしまうような強烈なプレッシャー。こうした問題点はずっと指摘はされてきていますが、根本的な改善はありません。
なぜか?
こうした問題点そのものを視聴者が楽しんでいるかではないでしょうか。教育的視点から見ればあり得ない酷暑下の試合も、体に一生残るかもしれない深刻な負荷を与える連投も、「美談」のエッセンスなのです。そういった提案は既にありますが、もし高校野球を涼しい京セラドームで行い、プロスポーツ並みのケータリングで豪華に飲食できる設備を整え、十二分に休養を取れるような2ヵ月のトーナメントに「改善」したらどうなるでしょうか。
恐らく高校野球ファンの興味を削ぐことはあっても、今以上に盛り上がる可能性はないはずです。
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