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「オリンピックのため」が合言葉のサマータイム、代償は精神疾患と心臓病?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/5 ページ)
東京五輪の暑さ対策として、サマータイム導入が検討されることになった。欧州では存廃が検討されているのに、「オリンピックのため」を合言葉に議論を進めようとしている。生活と健康に与える影響とは……?
2020年東京五輪・パラリンピックの暑さ対策として、夏季だけ時間を早めるサマータイム導入について検討するよう、安倍晋三首相が自民党に指示を出しました。一方、サマータイムの本家本元=欧州連合(EU)では、夏時間の存廃の検討を本格化させています。
その理由は「期待された効果が得られなかった」から。
サマータイムは、欧米では「デイライト・セービング・タイム(Daylight Saving Time)」と呼ばれ、「昼間の光を無駄にしない制度」です。太陽が出ている時間帯を有効に利用することを目的とし、省エネの効果なども期待されていました。
ところが、欧州の研究者たちが調査したところ、電化製品が増えたことで夜間のエネルギー消費を減らす効果は確認できず、レジャー活動が活性化することもなかったというのです。
日本でも戦後に一度実施されたことがありますが、残業が増え、寝不足を引き起こすなどと不評で、廃止されています。
そもそも、今回突然沸き起こった日本のサマータイム議論が、「オリンピックのため」という文脈が解せません。言い出しっぺの東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長は「暑さ対策の一貫」としていますが、ホントにそうなのでしょうか? 何でもかんでも「オリンピックのため」としてしまうのは納得できません。
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