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「オリンピックのため」が合言葉のサマータイム、代償は精神疾患と心臓病?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/5 ページ)
東京五輪の暑さ対策として、サマータイム導入が検討されることになった。欧州では存廃が検討されているのに、「オリンピックのため」を合言葉に議論を進めようとしている。生活と健康に与える影響とは……?
「暑さはチャンス」と発言した森会長
森会長といえば、もはや「気象災害」と言えるレベルの暑さが連日続き、熱中症で亡くなる方も後を絶たなかったさなかに、「ピンチはチャンス」という意味不明のコメントをしたお方です。
「この暑さでやれるという確信を得ないといけない。ある意味、五輪関係者にとってはチャンスで、本当に大丈夫か、どう暑さに打ち勝つか、何の問題もなくやれたかを試すには、こんな機会はない」
「“ピンチはチャンス”という発想で、暑さ対策で日本のイノベーションを世界に発信する機会」(日刊スポーツの単独インタビューより)
失礼を承知で申し上げれば、「外を歩いたことがない」のだと思います。ギンギンに太陽が照り付け、体温以上の熱波がうごめく“あの息苦しさ”を経験したことがないのです。
ならばサマータイムもしかり。残業が増えるのではないか? 寝不足になるのではないか? IT業界に莫大なコストが掛かるのではないか? などといったことは気にならないのかもしれません。「まさか、サマータイムで時間がずれると放映権を持っている米国のメディアにいいことがあるのでは?」などとうがった見方までしてしまいます。
……と、個人的な意見はこれくらいにして、健康社会学的にサマータイムについて考えてみようと思います。
サマータイムを導入した場合のデメリットはいろいろと指摘されていますが、私が最も懸念するのは「適応までのコスト」です。
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