有明ノリとシャケの争奪戦 ファミマの担当者が語るおむすび刷新の舞台裏:競合には負けられない(2/4 ページ)
コンビニ各社はおむすびの商品開発に力を入れている。味や風味の向上が注目されがちだが、原材料の調達を巡って各社はしのぎを削っている。ファミマの調達担当者におむすび開発の舞台裏を聞いた。
設定温度の変更にも一苦労
おむすびを陳列する販売じゅう器の温度設定も微妙に変えている。「18〜20度が一番おいしいのですが、16度以下になるとコメが固くなって味が落ちる」(池内氏)との理由から、じゅう器の設定温度を「18度プラスマイナス2度」から、「20度プラスマイナス2度」に変更した。
店舗では設定温度の変更ができないため、約1万7000店あるファミマの店舗を1店ずつメーカーの担当者が訪問したという。設定温度を変更する際には、棚の商品を全て撤去したり、温度を最終的に確認したりといった作業が発生する。一般消費者が想像する以上の“大プロジェクト”なのだ。
おむすびを成型するときに使う「成形型」も改良している。おむすびを口に含んだときに口の中で適度にほぐれるようするために、コメとコメの間に適度な空間ができるようにしているのだ。
スケールメリットならぬスケールデメリット
ファミマの店舗数はサークルKサンクスを統合したこともあり、近年、急激に増えている。
通常、店舗数が増えると、原材料を大量に購入することで仕入れ値を抑えられる「スケールメリット」が働くのだが、池内氏は「スケールデメリットが目立つようになってきた」と説明する。約1万7000店で販売されるおむすびの食材を安定的に提供してくれるような企業の数が限られるだけでなく、必要量の確保にも苦労するからだ。さらに、コメ、ノリ、シャケなどの価格は上昇を続けているという。想定内の価格に抑えながら、まとまった量を調達するのは難しくなりつつあるのだ。
おかずが肉中心の弁当とは違い、おむすびの具にはシャケやツナといった海産物が多いが、天然モノにこだわるシャケの調達には苦労させられた。池内氏は「手巻きのおむすびに使用しているのはアラスカなどでとれるベニジャケです。通常、8月中旬頃から漁獲が始まるのですが、17年8月に水産加工メーカーから『ベニジャケがほとんどとれない。価格もどんどん上がっている』と連絡を受けました。今回は、早めにオファーを出すことでなんとか必要な量を確保してもらいました」と語る。
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