65歳でネスレに中途入社したベテラン営業マンが輝いている理由:シニアスペシャリスト採用の条件(4/4 ページ)
大手メーカーで営業マンとして20年以上働き、50代で起業経験もある石川さんは、65歳でネスレ日本に入社した。上司や同僚にも仕事ぶりが評判だというが、そのわけとは――。
プライドを捨てる必要はない
豊富な経験と実績にもかかわらず非常に謙虚な石川さんだが、「仕事に燃えたい」と転職しただけあって、もっと会社に貢献してもっと稼ぎたい、というアグレッシブさも持ち合わせている。
「この年代にしては悪くない待遇だと思っていますが、給料はもっと上げてほしいです。今の時点では、僕は給料分ほども働けていないんじゃないかと思うんですよ。というのも、担当しているのは店舗だけで、(仕入れやキャンペーンに関する決定権を持つ)本部にはアプローチできないので、売り上げへの貢献度が少ないんです。それが歯がゆくて、『回る店舗の数を増やしてください』とお願いしたこともありますし、いずれは本部を担当して1つでも多くネスレの商品を並べていただけるように働きかけていきたいです。それでいくらか給料が上がっていけば嬉しいですね」(石川さん)
これまでの経験を踏まえ、最後に後進のビジネスパーソンへのアドバイスをいただいた。
「まず定年間近な人に伝えたいのは、自分が本当に何をやりたいのか、見定めることだと思います。それによって、今の会社で定年を迎えるのも、私みたいにいくつかの仕事を経験するのもありでしょう。そして定年後も働く場合には、プライドをどこまで抑えられるかが重要です。でも、『こういう経験をした』というプライドを捨てる必要はないんですよ。それを心の底にしまって、自分ができることをするという姿勢が大事だと思います。若い人には、『いずれはあなたたちも僕みたいになるんだよ』と伝えたいです。自分が歳をとった時に、次の若い人たちに何をしてあげられるのか、それを考えておいてほしいです」(石川さん)
ネスレはシニアスペシャリストの採用を今後も積極的に続けていく意向だ。なぜなら自社の人材の層を厚くすると同時に、社会課題の解決のための取り組みでもあると捉えているからだ。芹澤さんは「シニア層の活躍の場を増やすためには、ネスレ1社の動きでは足りない。同様の動きが他社にも広がってほしい」と訴えた。
著者プロフィール
やつづかえり(ERI YATSUZUKA)
ライター、編集者
コクヨ、ベネッセコーポレーションに勤務後、2010年にフリーランスに。13年に組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するWebメディア『My Desk and Team』開始。女性の働き方提案メディア『くらしと仕事』の初代編集長(〜18年3月)を務め、現在はYahoo!ニュース(個人)などで働き方、組織などをテーマに執筆中。
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