あえて言おう。私は「家畜」である:常見陽平のサラリーマン研究所(4/4 ページ)
小さな子どもの育児や家事に追われている父親はどんな悩みを抱えているのだろうか。筆者の常見陽平氏もそのひとり。育児や家事に追われる日々を送ることで、どんなことが分かってきたのか。
悩みを共有しようじゃないか
このような話を紹介すると、「自分のグチをツラツラと書きやがって」とお叱りの声が飛んできそうだが、男性はこのような悩みをもっともっと発信したほうがいいと思う。SNSを見ていると、家事・育児に関する悩みなどを発信しているのは女性のほうが圧倒的に多く、男性の声に触れる機会はほとんどない。
また、いまは「イクメン」「イクボス」のように育児に参加する男性、それをフォローする管理職が求められている。少子化が進んでいる中、子育ては大事だ。子育てに限らず、さまざまな事情を抱えた労働者が増えている。働く男性が育児に参加すること、育児をする部下を応援する管理職であることは誰も否定しないだろう。ただ、仕事の量や難易度を減らさないで、それを強要するのは時に「暴力」になる。「無理ゲー」(クリアが非常に困難なゲーム)と言ってもいいだろう。掛け声だけでは、破たんする。そして、私のようにモヤモヤしている労働者には耳を傾けるべきだろう。
いくら礼賛したところで、辛いものは辛い。また、いかにも仕事と家庭を両立している理想的なイクメン像、凄母像(すごははぞう)のもとで、なかなかそうなれずに悩んでいる人がいることも理解してほしい。だから、一部の女性向けメディア、育児メディアの論調には怒りを感じていることがあるのだ。どういうことかというと、仕事と家庭を両立している人が登場して、勇気付けられる一方で、「スゴい人」前提で語られると傷つく人がいることも忘れてはいけない。
イクメンという偽善的な言葉は、大嫌いである。ということで、私を「イクメン」と呼ばないでほしい。「主夫」と呼んでほしいのだ。そして、子育て絶賛中の父親諸君。ストレスばかりを抱え込まないで、悩みを共有しようじゃないか。
常見陽平のプロフィール:
1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。
関連記事
- 日本人が「通勤地獄」から抜け出せない、歴史的な背景
暑くなってきたので「満員電車」が辛くなってきた。「働き方改革を実現しよー」「時差出勤をしよー」と叫ばれているのに、なぜ“通勤地獄”は解消されないのか。その歴史をひも解いてみると、意外な事実が……。 - 剛力彩芽が叩かれる背景に、日本人の国民性
タレントの剛力彩芽さんが、ネット上で壮絶なリンチにあってしまった。交際宣言したスタートトゥディの前澤友作社長と同じタイミングで、ロシアW杯を観戦した写真をInstagramにあげたところ、批判が殺到したのだ。それにしても、なぜこのような「いじめ」が後を絶たないのか。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。 - 日本の親が子どもを「モノ」扱いしてしまう、根本的な理由
東京都目黒区で船戸結愛ちゃん(5)が虐待の末に死亡した。痛ましい事件が起きた原因として、専門家からは「児童相談所と警察がきちんと連携していなかったからだ」「児相の人員が不足しているからだ」といった声が出ているが、筆者の窪田順生氏は違う見方をしている。それは……。 - アラサー女性は「そろそろ転職」症候群に、注意しなければいけない
20代後半の女性で「そろそろ転職したい」と考えている人も多いのでは。「いまの仕事は自分に合っていない」「このまま続けていいのか」など、転職したい理由はいろいろあるだろうが、その前に考えなければいけないことがある。それは……。 - 「キラキラ広報」に未来はあるのか 仕事と外見の問題を考える
「キラキラ広報」という言葉を聞いたことがあるだろうか。文字通り、雰囲気がキラキラしている広報担当者のことを意味するが、彼女たちはどういった振る舞いをしているのか。また、どのように接すればいいのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.