新たな在留資格創設、それでも不透明な人材確保:どうする? 介護の人材不足問題(1/5 ページ)
日本全体の労働力人口が減少する中、とりわけ介護人材の確保は難航している。政府も海外からの人材受け入れに躍起になっているが……。
介護人材不足が問題となっている。第7期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づいて都道府県が行った将来推計によると、2016年度で約190万人であった介護職員数を2020年度に約216万人、2025年度に約245万人まで増やす必要があるとされている(図表1)(※1)。
しかし、日本全体の労働力人口が減少する中、介護人材の確保は難航している。需要が強い介護関係職種(※2)の有効求人倍率は2018年6月で3.72倍と、全職業の平均(1.37倍)を大幅に上回る(パートを含む常用のベース)(※3)。
そこで、介護人材不足に関するさまざまな論点を数回のシリーズレポートで取り上げたい。シリーズレポートの1本目となる本稿では、外国人材の受入れに焦点を当て、新たな在留資格を創設しても継続的な外国人材の確保が不透明である点を指摘する。また、外国人材の雇用を介護分野の成長に結び付ける視点の必要性についても述べる。
人材不足で期待される外国人労働力
2016年度の介護職員数である約190万人は、就業者全体の3%弱に当たる。就業者全体の減少が見込まれる中、2025年の介護職員数を245万人分まで増加させるためには、他の産業を無視した単純計算で、就業者全体に占める割合を約4%へ引き上げることが求められる(図表2)。
また、経済産業省[2016](※4)が推計した2035年の介護職員295万人を確保するためには、就業者の約5%が介護分野に就労する必要がある。政府が介護職員の処遇改善や潜在介護人材の呼び戻し、キャリアアップ支援などさまざまな施策を重点的に実施してきたこともあって、介護分野への人材流入が続いてはいる(図表1および図表2参照)。
だが、介護保険でカバーすべき範囲の制度的見直しや介護産業の生産性引上げが十分に進まず、従来のペースで増加する介護需要に対応できる介護職員数を確保するとすれば、就業者全体が減少する中で近年の介護職員の増加ペースを長期に維持していく必要がある。
※1 2015〜17 年度の介護給付実績などを踏まえて推計された介護職員の将来需要(厚生労働省[2018a]「第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について」(2018年5月21日))。
※2 平成23年改定「厚生労働省職業分類」に基づく「福祉施設指導専門員」、「その他の社会福祉の専門的職業」、「家政婦(夫)、家事手伝」、「介護サービスの職業」の合計。
※3 厚生労働省[2018b]「一般職業紹介状況(平成30年6月分)」
※4 2013年時点の介護サービス利用率等を基に、需要に合わせて伸ばした場合の介護職員数の将来推計(経済産業省[2016]「将来の介護需要に即した介護サービス提供に関する研究会 報告書」(2016年3月24日))。
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