「運休」「復旧」の判断とは? 災害と鉄道、そのとき現場は……:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)
大きな自然災害に見舞われた2018年。豪雪被害が出た福井県のえちぜん鉄道で復旧の陣頭指揮を執った担当者に、「復旧の優先順位」や「運休判断のタイミング」などについて聞いた。
本稿執筆中の2018年9月6日、震源地で震度7という「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」が発生した。全道的に大きな被害が出たほか、停電の影響でインフラがまひした。鉄道でもJR北海道、札幌市交通局の地下鉄と路面電車、函館市の路面電車、道南いさりび鉄道が全線不通となった。6日午後8時現在、いまだ不通のままだ。JR北海道についてはNHKが「7日昼より再開」と放送しているけれども、全ての区間ではないだろう。不通区間一覧を本記事の末尾に掲載した。
18年は自然災害に見舞われた年になった。17年末から3月までは「平成30年豪雪」で、日本海側に大雪被害が多発した。最近では「平成30年7月豪雨」だ。全国各地で被災し、特に西日本、四国、九州の鉄道や道路は寸断された。太平洋ベルト地帯の一翼を担う山陽本線の不通は物流に大きな影響を及ぼしている。8月には山形豪雨があり、陸羽西線と奥羽本線の一部区間が運休中だ。これらの路線の多くは、ようやく復旧、あるいは復旧の見通しが立ってきた。不通区間リストは小さくなると思われた。
その矢先に、史上最大級の台風21号が日本列島を襲った。関西空港線、和歌山線の一部区間が不通区間リストに加わった。そして北海道の鉄道全面まひだ。被災地では臨戦態勢となり、対応に追われている。
しかし、その背中に向かって「復旧の優先順位が違う」「廃止したい路線を後回しにしている」「運休の判断が早すぎる」などの声が飛ぶ。それに対して鉄道事業者側は反論せず、黙々と対処するだけだ。鉄道の現場の沈黙は「心ない声に応じる時間さえ無駄」だからか。しかし、黙っていては今後も不毛なやりとりが続いてしまう。誤解を誤解のままにしてはいけない。
そこで、18年2月25日、福井県のえちぜん鉄道で豪雪災害復旧の陣頭指揮を担当した方に伺った話を紹介したい。
平成30年豪雪において、北陸地域の被害が大きく伝えられた。JR東日本の信越本線で普通電車が雪に阻まれ、乗客約430人が約15時間も車内に閉じ込められた。除雪車両さえ立ち往生していたが情報が届かず、乗客を脱出させる判断ができなかった。国道8号線では約10キロの区間で1500台以上の車が立ち往生となった。避難の判断を誤ったか、雪に埋もれた車の中で亡くなった人もいた。
特に平野部の積雪が例年にない規模となり、福井市で147センチを記録した。えちぜん鉄道は1月10日に大雪による倒木で不通になったほか、2月5日から14日にかけて大雪に見舞われ、除雪と復旧を繰り返した。他の鉄道路線も同様だ。JR西日本は北陸本線で8日から、山間部の多い越美北線は20日から運行を再開した。そういう規模の災害だった。思い出していただけただろうか。
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