「40年で黒字」が難しい、阪急・大阪空港線 どうすれば実現できるか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)
新線計画がにぎやかな大阪近辺で、国土交通省が事業採算性の調査結果を発表した。なにわ筋線の開業を踏まえた接続路線については良好。ただし、伊丹空港と阪急宝塚線を結ぶ路線は40年間で黒字転換する見通しが立たないという。国内線航空利用者にはガッカリする結果となった。
鉄道事業はお金がかかる。そして客単価は極端に低い。だから鉄道は薄利多売を至上とする。初乗り運賃はJR西日本が120円、大手私鉄も150円前後。缶コーヒーやペットボトル1本分の運賃で3〜5キロくらい移動できる。大手私鉄や都心のJRについては、新線建設費用が回収済みだから安く設定できるという要素もあるとはいえ、地方にとっても鉄道運賃はバスより安い地域が多い。
飲食店で薄利多売を成り立たせるなら回転率を上げなくてはいけない。鉄道も同様で、低運賃で利益を出すためには大量輸送する必要がある。故に、鉄道は都市で成立する輸送機関であり、沿線人口が少ない地方の路線では利益が出ない。どうしても鉄道を残したいなら、鉄道で利益を受ける全ての関係者が応分に負担する必要がある。
新規路線建設となれば、なおのことハードルは高くなる。その現実を見せつける調査結果が発表された。国土交通省が4月11日に発表した「近畿圏における空港アクセス鉄道ネットワークに関する調査結果」だ。このなかで、大阪国際空港(伊丹空港)と、阪急宝塚線曽根駅を結ぶ約4キロの路線「大阪空港線」について「採算性向上策の検討が必要」とされた。
1日当たりの利用者が2.5万人も見込まれ、大阪空港に60分以内に到達できる人口が約122万人も増える。近畿圏外から国内線で訪れる人にとっても待望の路線だろう。しかし、建設費約700億円のうち、国などの補助金を差し引いても、黒字転換するまでに40年以上かかるという試算になった。
この40年という期間は、鉄道整備にあって国が補助金を投じるボーダーラインだという。国としては、国費を投じて赤字路線の建設を助けるわけにはいかない。たとえ阪急電鉄が「他の事業で黒字を出せるから、赤字路線を1つ抱えても……。税金対策になるし」と考えても、国としては、みすみす法人税が減るような事業に援助はできないわけだ。
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