東京都の「選ばれし6路線」は実現するのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)
東京都は「平成30年度予算案」に「東京都鉄道新線建設等準備基金(仮称)」の創設を盛り込んだ。2016年に交通政策審議会が答申第198号で示した24項目のうち、6路線の整備を加速する。6路線が選ばれた理由と、選ばれなかった路線を知りたい。
1月26日、東京都は「平成30年度予算案」を発表した。2月21日から3月29日まで開催される2018年の「第1回都議会」で審議し、議会の承認を得て発効する。この予算案の中で「東京都鉄道新線建設等準備基金(仮称)」の創設が盛り込まれた。議会が了承すれば「(仮称)」が外れて正式に発足する。都の予算案としては総額約7兆460億円。知事会見で、この基金は予算説明の早い段階でスライドを使って紹介されており、都の新施策、重要施策という位置付けになった。
知事会見によると「全ての世代が超高齢化社会をいきいきと活躍していくために、誰もが快適に移動できる手段として鉄道ネットワークのさらなる充実が重要」とのこと。東京都は、交通政策審議会が16年に国土交通大臣に提出した答申第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」で示した24項目30路線のうち、6路線を検討していくという。創設される基金は「選ばれし6路線」の実現に向けた関連事業の財源とする。
基金の資金は、いままで蓄えていた「社会資本等整備基金」だ。18年度の期末残高として見込まれる約4057億円のうち、約620億円を「東京都鉄道新線建設等準備基金(仮称)」として独立させる。約620億円の根拠は、東京都が株主として受け取ってきた東京メトロの配当金だ。
選ばれし6路線
この基金の対象となる6路線は次の通り。
カッコ内は16年7月に国土交通省がまとめた概算建設費用だ。(参考:鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果)
・羽田空港アクセス線(約3400億円)
JR東日本が構想する路線で、羽田空港と都心各駅を結ぶ。田町駅で上野東京ラインの北方面へ直通し、東京駅、上野駅、大宮駅と羽田空港を乗り換えなしで移動できる。大井町駅から埼京線へ直通し、渋谷駅、新宿駅、池袋駅、大宮駅と羽田空港を結ぶ。上野東京ラインは常磐線方面、埼京線は新宿から中央本線方面も視野に入るかもしれない。
・新空港線(約1800億円)
大田区が構想する路線で、東急電鉄多摩川線の矢口渡駅と京急電鉄空港線の大鳥居駅を結ぶ路線。このうち、東急電鉄の蒲田駅と京急電鉄の京急蒲田駅を結ぶ部分が対象となった。しかし、この地下区間だけ作っても「電車はどこから入れるんだ」となってしまうから、実際には矢口渡駅〜蒲田駅も合わせて検討されるだろう。あるいは「そっちは東急さんがやって」という意味だろうか。
東急多摩川線と直通し、さらに副都心線方面を視野に入れると、西武鉄道池袋線、東武鉄道東上線からも利用可能。京急蒲田駅乗り換えで羽田空港へアクセスできる。基本構想としては京急空港線の大鳥居駅を結節点とし、直通運転を理想とする。ただし、東急と京急は線路と車両の規格が異なる。対面乗り換え方式でも便利だと思われる。
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