「お客様満足度」を高めることばかり、考えてはいけない:喜びの戦略は割に合わない(1/5 ページ)
顧客満足度を高めることが大切――。このことを信じて疑わない企業も多いだろうが、実は“そこそこ”でいいことが分かってきた。顧客満足度の結果と将来の顧客ロイヤルティーの間に統計的な関係はなくて……。
応援される営業術:
会社で応援される人に、どのような傾向があるのか。信頼、誠実、謙虚など、さまざまな言葉が浮かんでくるが、やはり一生懸命仕事をする人は応援されやすい。そして、絶対に欠かせないのが「結果」である。
例えば、「営業の成績が伸び悩んでいる」人は、どのようにすれば売り上げを伸ばすことができるのか。結果を残すためには、何をすればいいのか。本特集「応援される営業術」では、営業経験者ではなく、さまざまな業界で活躍している人にアドバイスをいただく。
どうすればピンチを脱出できるのか、どうすれば成長できるのか、どうすれば未来を描けるのか。課題を克服するヒントをつかんでいただければ幸いだ。
日本においては長らく「顧客第一主義」の考え方が浸透し、お客様満足を高めるために企業努力を続けることが、企業にとっての優先課題となってきた。その根底には「お客様の満足度を高めれば、ロイヤルティーが向上し、リピートや紹介・口コミにつながる」という考えがあるからだろう。中でも、カスタマーサポートに代表される顧客サービスの質の向上は企業戦略上の重要課題とされ、心からのおもてなしこそが大事と信じて疑わない風潮がある。
それゆえどの企業にも、注目に値するサービスを実行して顧客の期待を著しく上回った担当者にまつわる伝説的なストーリーがあるのではないだろうか。サービスを受けた顧客は、その企業の代表者にいかに感動したかを手紙で伝え、その手紙は全社員に素晴らしい事例として共有される。そうした「おもてなし神話」は多くの企業であふれている。
今回、マーケターである神田昌典氏とリブ・コンサルティングの共同監修で、邦訳本『おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係』(原作『The Effortless Experience』、実業之日本社)を出版させていただいた。この書籍の中核的な著者であるマシュー・ディクソン氏は、長きにわたって数多くの調査を行い、セールスやサービスの本質について研究してきた第一人者である。
そのディクソン氏が今回のこの書籍で驚きの研究結果を公表している。なんと、顧客の企業満足度調査の結果と将来の顧客ロイヤルティーとの間に統計的な関係は事実上見られなかった、というのだ。さらに「企業は顧客の期待を上回ることから得られるロイヤルティーのメリットをたいそう過大評価している。喜びの戦略は割に合わない」と結論付けている。
本コラムでは、3回にわたって書籍の内容とリブ・コンサルティングが独自で行った日本における調査結果を元に、顧客ロイヤルティーの本質について迫っていきたいと思う。
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