日本人が「ある程度の暴力は必要」と考える、根本的な原因:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
全国で「暴力指導」が次々と明るみとなっている。会社、学校、クラブ、家など、あらゆるところで暴力指導が日常的に行われているわけだが、なぜ日本人は「ある程度の暴力は必要」と考えるのか。その思想には根深い問題があって……。
暴力容認思想の源流
2007年、愛知県豊橋市が行なった市民意識調査を見ると、現在とそれほど大きな変化がないことが分かる。
『「しつけのための子どもを強く叩く」は虐待と思うかの問いに、51%が虐待に当たらないと考え、二十代ではその数が65%に達した』(日本経済新聞 2007年12月21日)
2000年に宮崎市が父母800名を対象に行なった調査でも、60%以上の人が「お尻を叩く」「手を叩く」は「しつけとしてやってよい」と回答し、40%近くが、「あざができるなど子どもが何らかの外傷を負わない限り、たたく行為は虐待にはならない」(同上)と答えている。
親から虐待される子どもの中には、お腹や背中など衣類で見えないところを殴られたり、タバコを押し付けられたりというケースも少なくない。これは「跡にならなきゃセーフ」という日本人特有の暴力ガイドラインが関係しているのだ。
大きな変化が見られるのは、80年代だ。教育現場を中心に、つまり教師の間で、暴力指導を容認すべしという声が盛り上がるのだ。
例えば、1986年に日教組の教育研究機関「国民教育研究所」が、全国の小、中、高の教諭6171人を対象に調査を行なったところ、45%が「体罰は指導法の一つ」として回答して、生徒数が1000人以上という大規模校になると、59%とその割合は高くなった。
88年に宮崎大学教育学部の助教授が、東京、愛知、福岡、宮崎の教師、計2176人を対象に「体罰」についてアンケートを行ったところ、「厳しさは今の子に必要だ」「その場で分からせる必要がある」と回答したのが60%に及んだという。
この背景にあるのは、70年代から社会問題化していた非行や校内暴力であることは言うまでもない。
子ども同士のケンカやリンチだけではなく、教師にまで手を挙げる子どもがあらわれたことで、教育現場では「言っても分からないなら、体で分からせるしかない」という考えが急速に広まっていく。それをさらに後押したのが76年、茨城県立の中学で教師が体罰を行った生徒が8日後に死亡する事件である。裁判で教師は「ある程度の有力形の行使も懲戒権として認められる」と無罪。この判例が、体罰容認教師をさらに勢いづける。当時どの学校にも1人はいた「ジャージ姿で竹刀を振り回す体罰担当の体育教師」が誕生したのはこの時代だ。
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