2年間で2万個突破! 竹島水族館の「気持ち悪い」土産を作り出したプロ集団:ショボいけど、勝てます。 竹島水族館のアットホーム経営論(3/4 ページ)
休日には入場待ちの行列ができ、入館者数の前年比増を毎月達成している水族館が、人口8万人ほどの愛知県蒲郡市にある。飼育員たちのチームワークと仕事観に迫り、組織活性化のヒントを探る。
「おたくはああいうのをやったらイカン!」 上品な和菓子屋が背負ったリスク
中身の煎餅に関して最もリスクを負ったのは童庵だった。オオグソクムシは巨大なダンゴムシのような見た目の深海生物で、強烈な臭いを発することでも知られている。上品な和菓子を製造販売している童庵のブランドイメージを壊してしまう恐れがあった。安藤さんは真面目な表情で振り返る。
「実際、昔からのお客さんにお叱りを受けたこともあります。『おたくはああいうのをやったらイカン!』と。でも、和菓子離れが進み、製菓学校でも9割以上の学生が洋菓子を専攻するといわれている今、いろいろ挑戦しないといけないと私は思っています。うちは創業30年の店で、和菓子の世界では新参者です。上品な和菓子を一生懸命に作るという王道だけでは戦えません。若い人たちにうちの店に興味を持ってもらう仕掛けを今までも考えて実践してきました。『超グソクムシ煎餅』もその一環です」
存続への危機感をバネにして思い切った新企画を打ち出す姿勢は、小林さんと共通するものだ。試行錯誤の末、ほのかに「オオグソクムシ臭」はするが味は普通の塩煎餅並みにおいしいものが出来上がった。
オオグソクムシを模した形の箱作りで実力を発揮したのは箱秀の富田さんだ。原料である紙の効率的な使用や輸送のしやすさを考えると、ありきたりの四角い菓子箱にするのが正解である。変形の箱を企画してもコスト面で成立しないことが多い。
「普通は提案するだけ無駄なんです。でも、小林さんのお話を聞いていて、『この人ならば変形でも作れるかもしれない』という勘が働きました。提案してみたら、『面白い。これでいきましょう!』とすごい勢いで食いついてくれたのです」
繰り返しになるが、オオグソクムシは奇怪な見た目である。かわいい漫画風のイラストにして気持ち悪さを緩和するのが常道だ。しかし、小林さんはリアルな気持ち悪さにこだわった。
「せっかくオオグソクムシそっくりの箱を作るのだから、写真を使うことで押し切らせてもらいました。オオグソクムシをいろんな角度から50枚ぐらい撮影したのを覚えています」
その写真を受け取ったのは三愛企画のデザイナーである酒井朝子さん。あまりの気持ち悪さに「写真を見ているだけで無理!」な心理状態に陥ったが、富田さんと安藤さんと一緒に竹島水族館に行き、実物のオオグソクムシを見ることで印象が変わった。オオグソクムシには後ろビレがあり、水中を泳ぎ回ることもできる。海底にへばりついてジッとしている地味な生き物ではないのだ。
「お客さまが驚き喜ぶ顔をイメージしながら作成しました。目指したのは、インパクトの中に可愛げがあり、さらに捨てたくないと思ってもらえるパッケージです」
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