“終のすみか消滅”時代 「大企業かベンチャー企業か」という質問が愚問である、これだけの理由:就職と転職に悩む若者へ(3/5 ページ)
20代の約半数が「転職を考えている」という調査結果が最近発表された。1社を「終のすみか」とする時代が終わりを告げて久しい。東証一部上場企業、海外の企業、外資系企業、ベンチャー企業と転職を重ねる中で、さまざまな職場を経験してきた筆者が贈る「真剣にキャリアを切り開きたい若手」に対するアドバイス。
ベンチャーも「楽園」ではない
一方、ベンチャー企業での働き方はどうだろう――。
大企業に比べれば、ベンチャー企業は常に外で稼がないとつぶれてしまうため、社内会議をやる前に、営業や既存顧客との会議や打ち合わせの方が多くなる。必然的に「外向き」な話も多くなっていく。
また、年齢や役職に関係なく、営業や開発、企画、バックオフィス業務など、さまざまな業務を担う必要があるため、縦割りで仕事が割り振られる大企業よりも、成長の機会は一見多いように見えるかもしれない。従業員の年齢も低い傾向にあり、インターンシップに携わる学生や新入社員が、その会社の社長や役員とフラットな関係でコミュニケーションを取れるような企業も多いだろう。創業後1〜2年であれば、そこまで醜悪な社内政治や派閥争いも目にしないはずだ。
こう見ると、ベンチャー企業に入社した方がいいと思えるかもしれない。しかし、いざベンチャー企業で働くとなると、労働時間や福利厚生などの面で、大企業よりも大変なケースも多いのが現実だ。俗にいう「ブラック企業」も多い。
したがって大企業だからこそできる仕事、やらせてもらえる仕事もあるという事実にも目を向けなければならない。そもそも、新入社員や第二新卒での入社といった時点で、即戦力として活躍できるケースはあまりないだろう。就職や転職といった人生の岐路を決める場面で、そのように客観的に自分の状況を見つめることのできる「謙虚な姿勢」を、誰もが持つべきだと筆者は考えている。
「即戦力として活躍するのが難しい」という前提に立つと、最初のうちはお金をもらいながら勉強させてもらうという状況がほとんどのはずだ。その場合にも大企業であれば、まずは配属先で上司や先輩などの経験者からビジネスの基礎を学ぶことができる。大きな組織には、試行錯誤を繰り返して確立された属人的ではないノウハウがあるのだ。そのノウハウを学ぶことは、自分でゼロからトライアンドエラーを繰り返しながら仕事を覚えるよりも、数段もショートカットができるだろう。
また、「ある程度キャリアを積んだのちに起業したい」と思っているのであれば、やはり大企業で働く経験をした方が得だ。会社が大きくなるにつれ、創業時のメンバーとは違い、会社にロイヤリティー(忠誠心)を持たない社員も増えていく。そのような社員たちを束ねていく術は、さまざまな考え方を持つ社員が集まる大企業で働いていなければ、身に付けられないのではないだろうか。
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