“終のすみか消滅”時代 「大企業かベンチャー企業か」という質問が愚問である、これだけの理由:就職と転職に悩む若者へ(5/5 ページ)
20代の約半数が「転職を考えている」という調査結果が最近発表された。1社を「終のすみか」とする時代が終わりを告げて久しい。東証一部上場企業、海外の企業、外資系企業、ベンチャー企業と転職を重ねる中で、さまざまな職場を経験してきた筆者が贈る「真剣にキャリアを切り開きたい若手」に対するアドバイス。
ベンチャーでは「経営陣の分析」が重要
ベンチャー企業に入社を勧める場合であっても、いくつかアドバイスはするようにしている。そのうちの1つを紹介しよう。これは就職や転職に限らず、投資などでも全く同じなのだが、経営陣がどのような人物で、いかなるキャリアを築いてきたのかをしっかりと分析するということだ。経営陣といっても、ベンチャー企業の場合、社長と1人、2人ぐらいしかいないと思われるので、しっかりとその人材を分析して欲しい。
まず、経営陣全員が卒業してすぐに起業したようなケースは、あまりお勧めできない。仮にそのベンチャー企業がうまくいっていたとしても、その場合は彼らが優秀なだけで、その会社に入っても、ノウハウが盗めるどうかは分からないからだ。
理想は、経営陣の中に大企業で経験を積んだ人材がいるケースだ。その場合、その人の考え方や働き方、組織の作り方に、大企業で学んだエッセンスが含まれているため、大企業における学びを疑似体験ができる可能性もある。また、そもそも人材に依存しておらず、再現性の高い独自の戦略や仕組み作りといった、今後に生かすことのできる貴重な技術を盗める可能性もあるのだ。
いずれにせよこれからの時代、新卒として大企業に入ろうが、ベンチャー企業に入ろうが、その1社が「終のすみか」になることは考えにくいだろう。つまり、誰しもが複数の会社で労働経験を積むことになるということだ。仮にこの考えが現実のものになるのならば、重要なのは前述の通り、会社の規模や創業年数といった表面的なことではなく、何をやりたいのか、何を実現したいのかを念頭に置いて、その目的を最短で実現するためのベストを考え抜くことが重要になるだろう。
このようにいうと元も子もないかもしれないが、大企業にもベンチャー企業にもしょうもない社員はいるし、しょうもない経営陣も存在する。どちらに対しても過度に期待を抱くべきでない。自分勝手といわれるかもしれないが、まずは自分自身について考える癖をつけることが必要だ。会社は自己実現のために利用すればいい。その舞台が大企業なのか、ベンチャー企業なのかは、後からついてくる。
昨今のベンチャー企業ブームには踊らされるべきではない。しっかりと考え抜いたうえで、判断することが重要だ。もっと大事なことは、自らの市場価値を常に意識し、それを最短で最大化する方法を考えて実践することである。そこさえ意識して実践できていれば、たとえ判断を誤ろうとも、すぐに軌道修正できるのだから。
関連記事
- 35歳でフリーライターになった元公務員が踏んだ「修羅場」
公務員の安定を捨てて独立する――。希望の道に進むのは素晴らしいことではあるものの、そのプロセスは決してバラ色ではない。独立を切り出したとき、妻や母、職場の上司など、「周囲」はどう反応したか。35歳で公務員を辞めてフリーライターになった小林義崇さんに、当時の苦悩を振り返ってもらった。 - 2年間で2万個突破! 竹島水族館の「気持ち悪い」土産を作り出したプロ集団
休日には入場待ちの行列ができ、入館者数の前年比増を毎月達成している水族館が、人口8万人ほどの愛知県蒲郡市にある。飼育員たちのチームワークと仕事観に迫り、組織活性化のヒントを探る。 - 「グーグルには売らない」 日本勢は音声翻訳で覇権を握れるか
音声翻訳の技術は向上し、2020年の東京オリンピックまでには多くの場所で手軽に使えるようになりそうだ。日本勢がグーグルやマイクロソフトに打ち勝って、音声翻訳の市場で覇権を握れるかどうかが今後のカギとなる。 - 増税前に買ってはいけない! 「虚大都市・東京」のマンション事情
「東京は永遠に輝き続ける」という「不滅神話」がはびこる東京のマンション事情。しかし2カ月連続で値下がり傾向が出るなど異変の兆候が出ている。消費税増税に金利上昇と、不確定要素がある中で何を参考に売買を決定すればいいのだろうか。 - お金なし、知名度なし、人気生物なし 三重苦の弱小水族館に大行列ができるワケ
休日には入場待ちの行列ができ、入館者数の前年比増を毎月達成している水族館が、人口8万人ほどの愛知県蒲郡市にある。その秘密に迫った。 - コンビニオーナー残酷物語 働き方改革のカギは「京都」にあり
「働き方改革」の時流に逆らうかのように「24時間営業」を止めないコンビニ。その裏では、オーナーに「過労死ライン」の労働を強いている実態がある。そんな中、24時間を止めても純利益を8%増やした京都のオーナーが、メディアの取材に初めて実名で応じた。 - 内気な野球少年が悲しみを乗り越えて大人気水族館の「カピバラ王子」になるまで
休日には入場待ちの行列ができ、入館者数の前年比増を毎月達成している水族館が、人口8万人ほどの愛知県蒲郡市にある。飼育員たちのチームワークと仕事観に迫り、組織活性化のヒントを探る。 - ウナギ業界の「異常」にイオン、岡山のベンチャーが立ち向かう理由
今年もウナギ業界最大のお祭り「土用の丑の日」がやってきた。だが、そのお祭りを支えるのは、暴力団による密漁、そして香港を経由した「密輸ロンダリング」など、「異常」とも呼べる数々の違法行為だ。遅々として進まない日本政府の取り組みを尻目に、イオンや岡山のベンチャー企業「エーゼロ」は持続可能な養殖に向けて挑戦を始めている――。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.