それでも貴乃花親方を叩く人たちをつくりだす「事大主義」という病:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
貴乃花親方が「電撃引退」を発表した。この報道を受けて、あるジャーナリストはこのように解説した。 「まあ、自尊心の強い人ですからね。一兵卒にはなったけれど結果が出なかった。それが我慢できなかったのでしょう」。なぜこのジャーナリストは「印象操作」とも言えるようなコメントをしたのか。その背景には、日本人の根深い問題がからんでいて……。
親方の周囲は「長いものに巻かれる」を選んだ
一部報道では、貴乃花親方が引退を決断したのは、実は「一兵卒」になってから協会内で求心力がなくなって、孤立を深めたからだという話もある。
事実は分からないが、なくはない。親方の協会批判が、弟子の暴行事件によって沈静化したことで、協会内にいた親方のシンパたちも“大”につかえ始めたのは間違いないからだ。
親方の周囲は「政争の敗北」を受けて、みな事大主義の原則通りの行動をした。要は「長いものに巻かれる」と選んだ。だが、その波を1人だけ受け入れなかったのが、親方である。こうなってしまうと、山本が御用聞きを「異常」と感じたように、親方の目には相撲協会の人たちは「異常」としか映らない。
引退をしてから、親方の顔はつき物が取れたようにさわやかになった。バトルを繰り広げていた時のような苦悶の表情もなく、どこかスッキリしている。
貴乃花親方を批判する人たちは「りえ騒動からおかしくなった」「夫婦仲も最悪」「有力支援者の言うことも全く耳を貸さない」と、さながら精神に異常をきたした人のような扱いだが、あの晴れやかな表情を見る限り、実は本当に狂っているのは、相撲協会という“大”につかえる人々の方のような気がしてならない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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