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16歳のアイドルを自殺に追い込む、「夢を食うおじさん」の罪スピン経済の歩き方(1/6 ページ)

16歳の農業アイドルが自殺した。所属事務所のブラックぶりが明らかになりつつあるが、筆者の窪田氏は「事務所に注目が集まってしまうと、少女を死に追いやった『真犯人』を逃がしてしまうかもしれない」と危惧する。どういう意味かというと……。

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 辞めたい、辞めたいと周囲に漏らしていた16歳の「農業アイドル」が、イベントを無断欠席して自宅で首をつって亡くなる、という痛ましい事件が注目を集めている。

 彼女は農産物のPRイベントや物販で、早朝から深夜まで1日13時間にも及ぶ過重労働を強いられて月収は3万5000円だったという。あまりのブラックぶりに辞めたいと切り出したが、他のメンバーへ迷惑がかかると思いとどまったところ、所属事務所の担当者からはこんなLINEが返ってきている。

 「次また寝ぼけた事言い出したらマジでブン殴る」

 なんて話を聞くと必ずと言っていいほど、「こんなところで娘を働かせていた親の気が知れない」みたいなことを言う人たちが現れるが、ご家族は事務所と娘が具体的にどういうやりとりをしているのかは把握していなかった。無関心というわけではなく、遅刻やイベント欠席で多額の罰金を課すなど14の禁止事項が羅列された労働基準法度外視の契約書に、アイドル活動の詳細を家族や友人に漏らしてはいけないという項目も入っていたからだ。


業界特有の「罪悪感マネジメント」とは何か(写真提供:ゲッティイメージズ)

 これに対して、事務所側は、自立した大人になってもらいたかった、などともっともらしい説明をしているが、家族や友人から「孤立」させて精神的に追い込むのは、悪徳AVスカウトなど「女衒ビジネス」においては、古くから使われる極めてベーシックな手法である。

 事務所は過重労働や高圧的なやりとりは認めているが、自殺の責任はないと主張しており、損害賠償を求める遺族と真っ向から対立している。法廷の場で少しでも真相が明らかなることを期待したい。

 ただ、その一方で個人的には、この事務所にあまり注目が集まってしまうと、本当に少女を死に追いやった「真犯人」がまたしてもまんまと逃げおおせてしまうのではないかと危惧している。それは日本のアイドルビジネスにおいて脈々と続けられてきた「罪悪感マネジメント」だ。

 これは夢を目指す若者に対して、金銭的にサポートして「負い目」を感じさせることで、奴隷のように意のままに働かせるマネジメント方法で、芸能事務所や、なんちゃらプロデューサーなど「夢を食うおじさん」たちの常とう手段である。

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