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オホーツク“夢の庭”と生きる77歳「花の神様」から教えられたこと60年以上かけて築き上げた「遺産」(6/7 ページ)

「日本一変わっている花園 陽殖園」――。オホーツク海に近い、人口2600人ほどの北海道滝上(たきのうえ)町に60年以上かけて「奇跡の庭」を作り上げたのは77歳になる高橋武市さんだ。小さな町に全国から観光客が訪れる理由、武市さんの仕事観を聞いた。

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雑草だって花に見えてくる

 武市さんは「裕福であることが必ずしも幸せに結び付かない」と思っている。では、武市さんはどんな時に幸福を見いだしているのだろうか。尋ねてみると、「一生懸命面倒を見てきた花が咲いたとき。『余は満足じゃ』という気持ちになる(笑)」という。花が咲く。その一瞬のために、77歳を迎えた今、雨の日も風の日も重労働を厭わないのだ。花が咲かず心が折れた日も数多い。

 「当たり前だよ。100やって、形になることや他人に認められるのは1か2なんじゃないかな。でも1つのことが認められれば、いつか残りの部分も評価されるようになるんだ。突破口はその人によるけどね。自分の感性で『これだ』と思ったことをやらなきゃ。人以上に自分が大きくなろうと思ったら、ひらめきがとても大事だよ。どう実現するかはそのあとだけどね」

 武市さんは自ら花の交配も手掛けていて、「皆から見捨てられた草花を生かして交配してやる」のだという。

 「例えばこのヒメジョオンを作るのに40年かかったよ。一番青い花で良さそうなものを集めて交配させるんだ。1年で0.1ミリしか変わらなくても40年経てば4ミリの違いになる。4ミリ違えば違いが分かるでしょ? 分度器と同じだよ。最初の角度の違いは少しだけど、後になってかなりの広がりになる。だから『根本をどう見極めるか』が大事なんだ」

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「雑草も改良すると花になります」。交配を繰り返すことで少しずつ青さを増したヒメジョオン。手に取りツアー客に説明する武市さん

 「何十年もかけて世話をすれば、どんな花にも“色気”が出てくる。花としての立場を得るんだよ。それを作ってやるのが俺の仕事だから」

 どんな花でも手をかけて育ててあげれば色気が出てくる――。それは人間も同じですね、と武市さんに聞いた。

 「そうだね。手をかけてあげることと、その人の努力も大事。2つが揃えばその道のトップにはなれなくても、そこそこの花にはなれるんじゃないかなあ」

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