「から揚げのおじさんだ!」 食品ロス対策が社員と子どもを笑顔にした話:日本水産の取り組みから考える(1/3 ページ)
まだ食べられるのに捨てられる食品ロス問題が注目されている。日本水産では、これまで仕方なく廃棄していた自社商品を年間10トン以上、児童養護施設などに寄贈している。どのような経緯で活動をするようになったのだろうか。
「寄贈品のおかげで食費がかからない分、ノートや鉛筆といった子どもが使うものをそろえることができています」
「(寄贈された商品を調理して)バイキング大会をしたところ(中略)子どもたちだけでなく職員も大喜びで盛り上がりました」
これは、日本水産が品質には問題がないのにさまざまな事情で廃棄せざるを得なかった食品を、児童養護施設などに寄贈したことに対して寄せられた感謝の声だ。
日本水産はNPO法人のセカンドハーベスト・ジャパン(東京・台東、以下、2HJ)を通して、自社商品の寄贈を2008年から実施している。寄贈する商品数は増加を続け、17年には12.6トンとなった。
「食品ロス」問題が注目されている。農林水産省の調査によると15年度には日本国内でまだ食べられるのに捨てられてしまう食品は年間646トン発生している。解決のヒントはどこにあるのだろうか。
10月17日、2HJが開催したシンポジウムに登壇した日本水産の遠藤純子氏(CSR部 CSR課)の発表内容から探っていきたい。
フードバンク活動を始めたきっかけ
2HJは「フードバンク」という活動に取り組んでいる。これは、品質には問題がないのに食品メーカーや小売・流通企業などが廃棄している食品を引き取り、児童養護施設や生活困窮者などに届けるものだ。17年時点で、1445の企業や団体が2HJに食品を提供している。
フードバンクに協力しようとする際、企業の社会的責任(CSR)活動の一環として、CSR部や総務部といった部署が旗振り役となるケースが多い。しかし、日本水産の場合、物流関係の部署であるサプライチェーンマネジメント(SCM)部が主導して進めたという。
きっかけは、SCM部の社員がテレビ番組で他社のフードバンク的な活動を知ったことだった。この社員は、まだ食べられるのに捨てられる大量の商品を目の当たりにしており、心を痛めていた。また、食品を廃棄するのにも費用がかかるので、コスト削減の点からも何らかの対策をする必要性を感じていた。
そこで、全社員が集う集会で配布されたアンケート用紙に「当社もフードバンク的な活動をやるべきではないか」と記載したところ、たまたま役員の目に触れ、本格的な検討がスタートしたという。
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