「から揚げのおじさんだ!」 食品ロス対策が社員と子どもを笑顔にした話:日本水産の取り組みから考える(3/3 ページ)
まだ食べられるのに捨てられる食品ロス問題が注目されている。日本水産では、これまで仕方なく廃棄していた自社商品を年間10トン以上、児童養護施設などに寄贈している。どのような経緯で活動をするようになったのだろうか。
配送された商品は誰が食べている?
配送された商品はどのような形で食べられているのだろうか。
某母子生活支援施設では、「DELI施設内配食サービス」として週2回利用者に提供される。貴重なタンパク源として重宝されているそうだ。某教会では弁当のおかずとしてホームレスや日雇い労働者に提供されている。教会の担当者は「お腹を満たして、罪を犯さないように」との思いから活動を続けている。某児童養護施設では、子どもたちの日々の食事として提供されている。ドライバーが商品を施設に届ける際、子どもたちから「から揚げのおじさんだ!」と声をかけられる。子どもたちは「日本水産(株)のみなさまへ ありがとう」と書かれた寄せ書きをつくり、日本水産に贈っている。
社会貢献だけにとどまらないメリット
シンポジウムで印象的だったのは、講演した遠藤氏が施設の担当者や子どもたちから寄せられた声に触れることで、自社の活動に誇りを持つようになったと発言したことだ。
自社商品がどのようなお客に届き、どのように役立っているのか、直接目にする機会がほとんどない社員もいる。フードバンク活動に取り組むことによって、企業は「社会貢献している」ことをアピールできる一方で、社員が社会とのつながりを体感できるきっかけにもなりうるのではないかと考えさせられた。社員のやりがい向上や、廃棄ロスにかかわるコスト削減など、企業活動における具体的なメリットが広く知られれば、フードバンクのような活動はもっと広まるのではないだろうか。
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