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5万人を引き寄せる「パン祭り」を生んだ、まちづくりへの思い1時間半待ちの行列も(1/4 ページ)

2日間で5万人が訪れた「世田谷パン祭り」。全国のパン屋のパンを買うために、最大1時間半待ちの行列もできた。人気イベントはどのように生まれ、なぜ多くの人を引き付けるのか。仕掛け人に聞いた。

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 どんどん列が長くなっていく。その顔触れは若い女性だけでなく、家族連れや男性も多い。行列に驚く人も多いが、そのほとんどが期待に満ちた表情でためらうことなく列に加わる。その先に何があるのか。それは「パン」だ。

 10月7、8日の2日間、東京都世田谷区で「世田谷パン祭り2018」が開催された。今回で8回目のイベントには、パン屋や関連商品の店舗約140店が出店。パンに関する講演やワークショップなども開かれた。来場者数は2日間で約5万人。全国のパン屋の商品を自由に購入できるエリア「パンマーケット」は2カ所設けられたが、両方とも最大1時間半待ちの行列ができていた。

 現在、全国で年間40ほどのパンイベントが開催されているという。2011年に始まった世田谷パン祭りは、パンイベントブームの先駆けの一つといえる。どのように始まったのか。世田谷パン祭り事務局の代表を務める間中伸也さんに、人気イベント誕生のきっかけを聞いた。

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10月7〜8日に開催された「世田谷パン祭り」。5万人が来場した

ハンカチ専門店開業で気付いた“寂しさ”

 間中さんの本業は、パンとは関係がない。世田谷区にハンカチ専門店「H TOKYO」を構える、オールドファッションという企業の経営者だ。服飾雑貨のバイヤー経験を生かして、素材やデザイン性を重視した国産のハンカチを販売している。

 話は間中さんがハンカチ店を開業した2008年にさかのぼる。店を構える場所として選んだのが、世田谷区の三宿エリアだ。そこは、廃校となった中学校の校舎を活用したシェアオフィスとして知られる「IID 世田谷ものづくり学校」の近隣地域。ハンカチ店の開業前にこの施設で勤務していたことから、地域の様子や客層を熟知していた。

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世田谷パン祭り事務局代表の間中さんと、パン祭りの会場にもなっている「IID 世田谷ものづくり学校」。ここは18年4〜9月に放送されたNHK連続テレビ小説「半分、青い。」のロケ地にもなった

 愛着がある地域に店を構えた間中さんは、次第に“ある思い”を抱くようになる。「地域にお店はありますが、商店街のようなところはなく、点在しています。駅前でもないので、人がたくさん来るわけでもありません。自分の店だけで頑張っていても寂しい。地域の一員として、他の店と一緒に盛り上げたいと思うようになりました」

 そこで思い至ったのが、地域の店舗で構成する「商店会」の発足だ。衰退する商店街が増える時代に、新規の商店会を作ろうという試みは珍しい。しかし、他の店舗に声を掛けてみると、間中さんと同じ思いを持っている店主がたくさんいた。このエリアには、チョコレートやチーズ、だしの専門店など、個性的な店を構える若い店主が多かったからだ。

 「新しいことをやりたいという気持ちがあっても、それまで旗を振る人がいなかったのです」と間中さんは説明する。地域の店舗から賛同を得て、09年10月に「三宿四二〇商店会」を立ち上げた。現在、約30店舗が加盟している。

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