「火渡修行」にビジネス街での瞑想会 シリコンバレーのエリート社員が仏門に転じた理由:悩める人に寄り添う仏教目指す(1/5 ページ)
順調だった外資系会計事務所の職を捨て仏門に転じた人がいる。ビジネス街での瞑想イベントや子ども向けの“寺子屋”活動などに精力的に取り組んでいる。
「葬式仏教」という言葉がある。お葬式や法事があるときだけお寺を訪れるのだが、日常生活ではほとんど仏教と縁がない状態を指す。お寺との付き合いを実家の両親や兄弟に丸投げしている読者も多いのではないだろうか。
もともと仏教とは、苦しむ人を救済するものである――こんな思いから、外資系会計事務所の職を捨て、仏門に転じた人がいる。厳しい「火渡修行」などに励む一方で、ビジネス街で瞑想イベントを開催したり、子どもたちを集めた“現代の寺子屋”活動に取り組んだりしている。悩める人たちとの接点を少しでも増やそうと、寺を飛び出してさまざま活動に取り組んでいるのだ。
どのような経緯で、ユニークな活動を展開するようになったのか。真言宗醍醐派の僧侶であり、東京と千葉にある2つの寺を運営する金澤真勝氏(49歳)に話を聞いた。
ビジネスパーソンに仏教の教えを伝える
まず、金澤住職がこれまで取り組んできた活動をいくつか紹介しよう。
朝の出勤前に、本格的な瞑想の習慣を身に付けませんか?――。こんなキャッチコピーで瞑想イベントを行っているのは「ココロ寺(じ)」と呼ばれる移動式寺院だ。ビジネス街にあるビルの地下室を使い、午前7時30分から金澤住職による瞑想指導が行われ、午前8時30分には朝食が提供される。2017年4月から本格的にスタートしたこのイベントは利用者に好調で、参加者数が50人を超える日もあるという。
18年5月には、アップル米国本社マーケティング担当バイス・プレジデント(副社長)兼 日本法人代表取締役だった前刀禎明(さきとうよしあき)氏と組んで、「セルフ・イノベーションアカデミー」の講師も務めた。
金澤住職は、受講者にビジネスパーソンが多いことを踏まえ、自身の体験やその時々で話題になっているテーマを織り交ぜながら話をしているという。例えば、「ストレスに強い人はどんな考え方をしているのか?」というテーマを取り上げたときは、受講者になじみのあるポジティブシンキングの概念と、仏教の考え方を取り入れた内容にしている。
関連記事
- 外国人材受け入れをもっと 法の壁に風穴開けた就職支援会社社長の執念
2019年に外国人材の受け入れ条件が緩和される。火付け役は外国人の就職支援のパイオニア企業の社長。日本で働けなかった外国人の無念を背負っての活動が実った。 - 5万人を引き寄せる「パン祭り」を生んだ、まちづくりへの思い
2日間で5万人が訪れた「世田谷パン祭り」。全国のパン屋のパンを買うために、最大1時間半待ちの行列もできた。人気イベントはどのように生まれ、なぜ多くの人を引き付けるのか。仕掛け人に聞いた。 - 400万DLの女性向けアプリを立ち上げた、新卒男性リーダーの成長
Gunosyが2017年にリリースした女性向け情報アプリ「LUCRA」が400万ダウンロードを突破。立ち上げたのは、若手男性社員である渡辺謙太さんだ。「若手」「男性」という不利を跳ね飛ばし、新サービスをヒットに導いた渡辺さんの仕事術とは? - 赤字の海外事業を立て直したサイゼリヤの「たたき上げ役員」
サイゼリヤは中国やシンガポールなどの海外6法人で約370店舗を運営している。同社の利益に大きく貢献する存在に育った海外事業だが、進出当初は赤字に苦しんだ。その事業を立て直したのはサイゼリヤ一筋で働いてきた「たたき上げ役員」だった。 - 閉店に追い込まれた温浴施設が若者から大人気になった理由
若い女性に人気の温浴施設「おふろcafe utatane」――。実は4年前までは年配の男性客が中心で、しかも赤字続きのスーパー銭湯だったという。おふろcafe utataneを運営する温泉道場の山崎寿樹社長はどのようにして施設を改革したのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.