「火渡修行」にビジネス街での瞑想会 シリコンバレーのエリート社員が仏門に転じた理由:悩める人に寄り添う仏教目指す(3/5 ページ)
順調だった外資系会計事務所の職を捨て仏門に転じた人がいる。ビジネス街での瞑想イベントや子ども向けの“寺子屋”活動などに精力的に取り組んでいる。
先代の住職の葬儀で受けた衝撃
金澤住職は、25歳で入社した外資系会計事務所で順調にキャリアを築いてきた。国際税務が専門で、上場企業の税務をチェックする業務に従事していた。本田技研工業や三井住友海上火災保険といった大企業の社員とやりとりするやりがいのある業務だった。
34歳になると米国のシリコンバレー事務所に転勤。ちょうどその時、米アップルがiPodを発表し、取引のある日本企業がシリコンバレーに押し寄せていた。職場の人間関係にも恵まれ、進出企業の税務業務に取り組んでいたという。
先代住職が亡くなった
金澤住職の妻である佑泉氏は、大日山神崎寺と二七山不動院の先代住職の次女だ。もともと、金澤住職は仏門に入るつもりはなかったが、先代の住職が亡くなったあとの葬儀に訪れる信徒を見て衝撃を受けたという。
「葬儀に参列された方々が『先代に救われた』『先代は私の心の恋人でした』とお話されていたのです。私の実家は別の宗派ですが、葬儀と法事のときくらいしか住職の方と接する機会がなかったので、感謝の言葉を述べるという対象では正直ありませんでした」(金澤住職)
先代住職は毎日のように信徒からさまざまな相談事を持ち掛けられていた。信徒からの信頼も厚く、口コミでどんどん相談に来る人が増えていった。そのことを知った金澤住職は、真言宗に関連する書物を読み、仏教への関心を高めていった。
先代住職が亡くなったあと、2つの寺は空き寺の状態になった。後継ぎがいなかったこともあり、ある弟子が信徒の要望に応じて法事などを行っていた状態だった。
金澤住職は、米国で勤務していたときも、仏教のことをどこかで考えていたという。また、信徒から「相談する人がいなくて困っている」という声が高まっていることを聞いた金澤住職は、空き寺を守っていた弟子から「あなたが出家したらどうでしょうか」と勧められたこともあり、仏門に入ることを決意した。仕事を辞めることが惜しいと考えたことはなく、むしろ、新しい挑戦に燃えていたという。
金澤住職は36〜37歳のとき、仏教界でも修行が特に厳しいことで有名な京都の醍醐寺で過ごした。最大で18時間正座を組んだり、外の世界との交流を4カ月間絶たれたりといった、厳しいものだったという。金澤住職は、現在も熱い火の上を歩く「火渡修行」などに取り組んでいる。
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