自らをアップデートする理系の生き方:池田直渡「週刊モータージャーナル」【番外編】(1/4 ページ)
日本独自の問題に、終身雇用の融通の利かなさがある。例えばエンジニアの場合、新卒から30年以上も1つのジャンルに縛り付けられることには問題がありすぎる。それを解決できる会社があった。
日本の生産性を見るには1人当たりGDPを見るのが分かりやすい。本当は政府機関が分かりやすいグラフを出すべきだが、妥当なものが見つからない。個人が作成したグラフだと著作権があって勝手に引用できないので、興味のある人は「一人当たりgdp+日本+順位+推移」などで検索すると、さまざまな人がグラフを作成している。
IMF(国際通貨基金)が公開している統計によれば、かつて世界第3位だった日本の国民1人当たりGDPは現在26位まで後退してしまった。それが何を表すかと言えば、日本人の生活が国際水準で見てどんどん貧困化しているということだ。それを止めたいのであれば、1人当たりの生産性を上げるしかない。そのために必要なのが「働き方改革」である。
労働流動性が低い日本
さて、1人当たりGDPの落ち込みは経済的現象なので、もちろん原因はさまざまで、そう単純ではない。しかしながら、日本独自の問題として考えなくてはならないのは終身雇用の融通の利かなさだろう。
例えばエンジニアの場合、新卒から30年以上にわたって1つのジャンルに縛り付けられることには問題がありすぎる。30年前、ソニーやパナソニックにエンジニアとして就職し、テレビ事業に配属された人はエリートだったはずだ。その日本の技術の象徴でもあったテレビ製造が今、ここまでの凋落(ちょうらく)を迎えていることなど誰が予想できただろうか?
能力の高いエリートが、業界の衰退とともに沈んでしまうようでは日本の生産性は向上しない。生産性を上げるには、エンジニアを最初の配属先ジャンルと切り離し、常に適材適所に異動させるべきなのだ。
切り離した後には、次に何を自分の専門にするかを会社任せにするのではなく、自分の頭で判断し、そのためには、新たに必要になる技術を勉強をし直すシステムがなければならない。それができれば常に生産性の高いジャンルにおいて、現役エンジニアであり続けることができるはずである。
いつもならこのまま大所高所の話にどんどん進むわけだが、今回はちょっと趣を変えてみる。そういう変化の著しい社会の中でエンジニアとしてより安全性が高く、満足行く仕事ができる方法はないのかという、つまりは個人の生き方の話にフォーカスしようと思う。
関連記事
- 常識を「非常識」に徹底するマツダの働き方改革
マツダの働き方改革について書きたいと思う。あらかじめ断っておくが、マツダの働き方改革は、いわゆる総務・人事の領域の話ではない。それは徹底的にクルマづくりの話なのだ。 - 世界が知らない“最強トヨタ”の秘密 友山副社長に聞く生産性改革
トヨタがレース活動を通じて働き方改革を推進する理由。トヨタGRカンパニーのプレジデントである友山茂樹副社長へのインタビュー取材によって、なぜそんな大胆な改革が可能なのかを究明した。 - トヨタ流の働き方改革とは何か?
トヨタ自動車が働き方改革にモーターレースを用いるという、非常にユニークな取り組みを行っている。まずは働き方改革の全貌をざっくり分かってもらわないと意味が伝わらないだろう。今回は予備知識編として、働き方改革の俯瞰(ふかん)的な話を書いてみたい。 - 豊田章男社長がレースは「人を鍛える」という真意
自動車メーカーのレース活動をどう考えるだろうか? 結局のところ道楽ではないか? あるいは、せいぜい広告宣伝。恐らく多くの人はそう思っているはずだ。ところが、トヨタ自動車の場合、これが深謀遠慮に富んだ「働き方改革」の推進システムなのだ。その並外れたユニークな手法を明らかにしたい。 - 上からも下からも攻めるトヨタ
トヨタは2つの発表をした。1つは「KINTO」と呼ばれる「愛車サブスクリプションサービス」。もう1つは販売チャネルの組織改革だ。ここから一体トヨタのどんな戦略が見えてくるのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.