女性の昇進意欲を左右する基幹的職務経験:何が必要か?(3/6 ページ)
政府は女性管理職の割合を2020年までに少なくとも30%程度とする目標を掲げている。しかし、この「2020年30%」という目標の達成は厳しい状況にあるのだ。その障壁の1つとなっているのが、女性の昇進意欲を高めることである。
ポジティブ・アクション
川口(2012)(※5)によれば、職場内に残る男女の役割分担意識などを企業が自主的かつ積極的に解消する「ポジティブ・アクション」(※6)が女性の昇進意欲の向上に有効であるという。
加えて、上司が部下を信頼して仕事を任せ、適宜相談に乗ることや、高い課題や目標を設定することなどの上司のマネジメントが、男女双方の昇進意欲に重要な役割を果たしているという分析結果もある(※7)。
これは、米国の臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論(動機付け・衛生理論)(※8)」を用いて説明することができるだろう。二要因理論では、仕事の満足度やモチベーションは、「満足」に関わる要因(動機付け要因)と、「不満足」に関わる要因(衛生要因)という二要因で規定されると考えられている。動機付け要因には仕事の達成感や周囲からの承認、仕事の面白さ、責任や昇進などが含まれており、衛生要因には会社方針や上司との関係、職場環境、給与などが含まれる。
この理論に基づいて整理すると、両立支援策は衛生要因に該当するため、仕事の不満やモチベーションの低下を改善させることは期待できるが、仕事の満足度やモチベーションを高めることにはならない。他方、ポジティブ・アクションや職場の上司のマネジメントは動機付け要因に該当すると考えられるため、女性の昇進意欲を高める可能性がある。
※5 川口章(2012)「昇進意欲の男女比較」『日本労働研究雑誌』No.620, pp.42-57
※6 「ポジティブ・アクション」については、厚生労働省委託事業 ポジティブ・アクション情報ポータルサイト参照。
※7 武石恵美子(2014)「女性の昇進意欲を高める職場の要因」『日本労働研究雑誌』No.648, pp.33-47
※8 須田敏子(2005)『HRM マスターコース 人事スペシャリスト養成講座』慶應義塾大学出版会 奥林康司編著(2003)『入門 人的資源管理』中央経済社
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