女性の昇進意欲を左右する基幹的職務経験:何が必要か?(4/6 ページ)
政府は女性管理職の割合を2020年までに少なくとも30%程度とする目標を掲げている。しかし、この「2020年30%」という目標の達成は厳しい状況にあるのだ。その障壁の1つとなっているのが、女性の昇進意欲を高めることである。
昇進意欲を高めるポイントは「タイミング」と「経験」
女性のキャリア意識が転換するタイミング
男女ともに、入社後の初期キャリアの形成は、その後の職業キャリアに大きな影響を与えることから重要である。入社時点は意欲が高かったが働いている中で意欲が低下する人もいるだろう。
女性の場合、主体的に仕事に取り組めるようになったり昇進候補になったりする時期と、出産や子育ての時期が重なることが多く、仕事と家庭との両立の難しさについて逡巡しているうちに昇進意欲が停滞・低下する可能性がある。
中央大学大学院戦略経営研究科ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクトの「社員のキャリア形成の現状と課題〜社員のキャリア形成の現状と課題に関する調査報告書〜[第2版]」(※9)において2014年に実施されたアンケート調査によると、キャリア意識が変化する時期で男女に違いが見られるのは「入社5年目以降」であるという。
同報告書では、「勤続5年〜10年未満のキャリア段階における能力開発期の男性について見ると、入社時の昇進意欲は45.9%であり、現在は7.2%ポイント上がって53.1%である。
これに対し、同勤続年数層の女性は、入社時は37.9%が昇進意欲を持っていたが、現在は28.4%と9.5%ポイント減少している」「勤続5年〜10年未満の女性の昇進意欲が入社時から約10%ポイント低下する点については、当該時期のキャリア形成のあり方に課題があると考えられる」と指摘されている。
実際、勤続5〜9年目は女性のキャリア形成においてどのような時期に当たるのかを、昇進のタイミングを念頭におきつつ、勤続年数別の役職者割合との関係から確認しよう。図表2は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」から女性労働者に占める係長級以上の役職者割合を勤続年数別に表したものである。
勤続3〜4年では係長級に就く女性割合は1.6%と低いが、5〜9年になると2.7%、10〜14年になると5%へ高まり、勤続15〜19年では課長級の役職者割合も高まる。勤続15年目以降において課長以上の管理職の割合が明確に高いことから、管理職の前段階である係長などに勤続10〜14年目までに就くことができるかどうかが重要である。その意味においては、係長の昇進候補に選ばれ始める勤続5〜9年目に女性の昇進意欲が低下すると、管理職への昇進がさらに遅れたり、実現しなかったりすることになる。
先に紹介した通り、中央大学大学院の調査では、勤続5〜9年目において女性のキャリア意識が入社時点よりも大きく低下していることが指摘されている。一般に勤続5〜9年目といえば、その先のキャリアを改めて考える時期に当たり、また、結婚や出産などの将来のライフプランを検討する年齢に差し掛かっていることが多い。そのため、その時期の女性について昇進意欲の低下を避け、昇進意欲を養成するために何が必要かという点が最も重要であると考えられる。
※9 中央大学大学院戦略経営研究科ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト(2016)「社員のキャリア形成の現状と課題〜社員のキャリア形成の現状と課題に関する調査報告書〜[第2版]」
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