東京メトロ、「刃物男」など想定した防犯訓練を公開 「さすまた」で客の安全守る:五輪に向けテロ対策強化(1/2 ページ)
東京メトロが防犯訓練の模様を報道陣向けに公開。刃物を持った不審者と、線路内に投げ込まれた発火物に対処するもので、約150人の社員が参加。2020年の東京五輪に向けて、テロ・治安対策を強化する狙い。
東京地下鉄(東京メトロ)は11月13日、防犯訓練の模様を報道陣向けに公開した。刃物を持った不審者と、線路内に投げ込まれた発火物に対処する訓練が行われ、約150人の社員と約20人の警察・消防関係者が参加した。2020年の東京五輪に向けて、テロ・治安対策を強化する狙いがある。
東海道新幹線内で今年6月、乗客の男女3人が刃物で襲われて死傷する事件が発生。再発を防ぐため、JR東海は新幹線内に防護装備や医療用品を配備するなど防犯体制を強化している。
東京メトロの管轄下では、1995年に「地下鉄サリン事件」が発生して以降、大規模な死傷事件は起きておらず、地上に線路が少ないことから線路内での発火事件も少ないという。そのため従来は地震などの自然災害に備えた訓練を重点的に行ってきたが、万が一のリスクに備えて開催を決めたとしている。
防犯訓練の模様は?
「近づくな!」「殺すぞ!」――。不審者対策のパートでは、刃物を持ったサングラス姿の犯人役が発した怒鳴り声に、訓練とは思えないほどの緊迫感が漂った。犯人は駅のホームで電車を待っていた複数の客を刺し、逃げているという設定だ。
犯行を確認した駅員はまず改札階で、警察・消防に通報。指令機能を持つ社内部門にも連絡して指示を仰ぐとともに、駅長が中心となって「現地災害対策本部」を設置した。
次に一部の駅員は、U字型の金具に柄を付けた「さすまた(刺又)」を持ち、ホーム上の犯人の元へと急行。刃物を振り回す不審者にさすまたを突き付けながら詰め寄り、じりじりとホームの隅へと追い込みつつ、警察・消防の到着を待った。
さらなる混乱を生まないよう、ホームにいた客は緊急停止ボタンを押し、駅に進入中の列車は緊急停止。司令部門からの指示で、車内の乗務員はドアを開けないまま状況を注視した。
駅員が犯人にさすまたを向けてけん制し、時間を稼いでいる間に、他の駅員は負傷者の状況を確認。客の中の医療従事者に協力を呼び掛け、残る客に日本語と英語で指示を出し、ホームへと避難誘導した。
状況を把握した指令部門は、緊急停止していた電車の乗務員に駅を通過するよう指示。電車が通過し、次の駅に向かった直後に警察が到着。刃物による攻撃を盾で防ぎ、瞬時に犯人を確保した。次いで救急隊が到着し、ホーム上の重傷者を搬送した。
続いて行われた発火物対策のパートでは、発火物を確認した技術部門の社員が消防と指令部門に連絡し、全線に発車待ち指令が出され、消防による消火が行われ、発車待ちが解除される――という一連の流れのシミュレーションが行われた。
内容を改善しながら訓練を重ねていく
訓練は無事に終わったが、犯人に刺される被害者が出た際、客の中に医療従事者がいたのは“偶然”。犯人が警察が到着するまで抵抗しなかったことや、不審物が大規模な爆発につながらなかったことも訓練ならではの設定だといえる。
そのため東京メトロは今後、一連の事件が実際に起きる可能性を想定し、内容を改善しながら訓練を継続する方針だ。同社の広報担当者は「今回の訓練終了後に良かった点・悪かった点を洗い出し、今後の訓練につなげる」「いつ起こるか分からない事態に対応できるよう、訓練を重ねていく」と話している。
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