派遣社員の8割が「同一労働同一賃金」の意味知らず 「自分に影響する」との実感乏しく:企業側も対応に苦慮か
派遣社員の8割が「同一労働同一賃金」の意味を把握していないことがエン・ジャパンの調査で分かった。正社員との待遇差を解消する目的があるが、派遣社員は「自分に影響する」と実感できないケースが多いという。企業側も対応を煮詰められない状態になっているようだ。
正社員と非正規社員との待遇差を解消する目的で「働き方改革関連法」に盛り込まれた「同一労働同一賃金」だが、派遣社員の8割はその意味をよく知らない――。人材会社エン・ジャパンの調査結果でこんな結果が出た。
同社の担当者によると、その要因は(1)「同一労働同一賃金」と自分との関連性が分からず、関心が薄い点、(2)法律施行後に生活がどう変化するか、具体的にイメージできない点、(3)企業側(派遣元)の対応が見えない点など。
「派遣会社は、厚生労働省から『業務取扱要領』が出されて初めて対応を検討するため、現段階では対応を煮詰められない状態になっている。そのため、派遣社員はイメージを持てずに自分との関連性が見えないのだろう」(担当者)としている。
印象は「良い」が7割超
「同一労働同一賃金」の意味を知っている派遣社員に印象を聞いたところ、「良いと思う」が74%を占め、「良いと思えない」は9%、「分からない」は17%だった。
肯定的な層からは「業務内容が同じなのに待遇に差が出ることに不満に感じていたので、解消されればうれしい」「正社員と同等以上の仕事量をしているのに、給与や賞与で待遇に差が出るのはおかしい。解消されれば仕事へのモチベーションも上がる」などがあった。
一方、懐疑的な層からは「社員になる必要がないと考えて派遣やバイトといった雇用形態を選ぶ人が増えたら、正社員1人当たりへのしわ寄せがさらに大きくなるのではないか」「能力が発揮できない人の生活が脅かされることになるのでは」などの声が挙がった。
「同一労働同一賃金」に期待することは?
派遣社員が「同一労働同一賃金」に期待することは、「賞与の支給」が80%でトップ。以下、「給与アップ」「交通費の支給」(ともに71%)、「仕事に対する評価の明確化」(45%)、「研修など学ぶ機会の充実」(42%)と続いた。
正社員との仕事における差で納得できることは、「仕事への責任の重さ」(69%)、「役職の有無」(67%)、「資格やスキルの有無」(60%)、「仕事内容の違い」(68%)、「深夜・早朝など働く時間帯」(49%)、「転勤の可否」(39%)、「残業の可否」(22%)という結果だった。
調査は2018年9月27日〜10月29日にかけて、同社のサービス「エン派遣」のユーザー316人を対象に、インターネット上で実施した。
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