引退危機の横綱、稀勢の里をひそかに苦しめている「真の師匠不在」:赤坂8丁目発 スポーツ246(2/3 ページ)
またまたである。横綱、稀勢の里が休場した。「もう無理でしょ」「辞めたほうがいいよ」といった指摘がたくさんある中で、なぜ横綱は引退しないのか。その背景に……。
稀勢の里が引退しない理由
どうして稀勢の里は引退しないのか。簡単に言えば、周りが辞めさせたくないからだ。19年ぶりの日本出身横綱として絶大な人気を誇り、日本相撲協会からも猛プッシュを受けている。他の横綱2人はモンゴル出身力士で絶対的存在かつ無双の白鵬が完全なヒール、そして鶴竜も人気面ではイマイチ。
だから稀勢の里が引退すれば、今のような相撲人気の維持は難しくなってしまうので、何とかしがみついてでも現役を続けてほしい。そしてあわよくば、復活を遂げてもらえれば――。そういう考えが協会幹部の頭の中にはこびりついている。
ただ、こうした背景と照らし合わせてみると、逆に稀勢の里も気の毒な立場と言えるのかもしれない。協会幹部を含めて周りは「現役続行」を訴える人物ばかりで固められ、たとえ本人が辞めたくても辞められない立場であるという話は多くの関係者から見聞きする。
その中で「とにかく稀勢の里は生真面目というよりも、愚直と評したほうがいいかもしれない。だから周りから『やれ』と言われれば自分の考えを押し殺しても、ただうなずくしかない。性格を決め付けるのはよくないかもしれないが、横綱としてもう少し『我』を出してもらえればという気がする」との指摘を耳にしたとき、「確かにそうかもしれないな」という思いが脳裏をよぎった。
言うまでもなく今、稀勢の里は田子ノ浦部屋の看板力士だ。しかし同部屋の親方からは、一体どの程度の助言をもらっているのだろうか。しっかりと身内としてこれまで親身になってもらい、叱咤(しった)激励を浴びせられてきたのだろうか。申し訳ないが、そんな疑問はどうしても拭えない。
協会内でも「田子ノ浦親方と稀勢の里に距離感ができてしまうのは仕方がない」と口にする関係者は数多い。鳴戸部屋ではもともと兄弟弟子の関係だったとはいえ、やはり稀勢の里としては故鳴戸親方(元横綱隆の里)のほうが“純粋な師匠”だ。自らを相撲界へ導いてくれた故鳴戸親方の指導と助言があったからこそ、稀勢の里は成長を遂げてきた。これは相撲界でも広く知られたエピソードだ。
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