引退危機の横綱、稀勢の里をひそかに苦しめている「真の師匠不在」:赤坂8丁目発 スポーツ246(3/3 ページ)
またまたである。横綱、稀勢の里が休場した。「もう無理でしょ」「辞めたほうがいいよ」といった指摘がたくさんある中で、なぜ横綱は引退しないのか。その背景に……。
「ご苦労様でした」とは言わない
もし故鳴戸親方だったら、今の周辺と同じように単なるオウム返しで「次も進退をかける覚悟を持ち、何とかがんばって現役続行だ」などと言い続けるだけでなく、自分の経験も踏まえながら、何らかの形で的確なアドバイスと方向性のヒントを稀勢の里に与えていたはずだ。
もちろん去就を含めた方向性に関して最終的に決めなければいけないのは横綱自身だが、そこに至るまでの助言はやはり必要不可欠。そういう意味でも稀勢の里には今、誰かに相談することすらもできず、どのようにしたらいいのか分からなくなっているところが見え隠れする。
明らかに稀勢の里は人気ばかりが先行し、周りが一刻も早く横綱にしなければいけないと無理矢理に持ち上げられ過ぎてしまった。本来ならば、もっともっと強い力士であることは間違いない。だが最大の恩師である故鳴戸親方の存在を失ってしまってから事実上、たった1人でまい進し続けて来た相撲人生のなかで、金言を送る人物が現れていたら、さらに花開いていたような気がする。
ご苦労様でした。もうお引取りください――と言うのは簡単なので、あえてそうは言わない。恥も外聞もなく、「チャンスをください」と口にする稀勢の里を信じ、孤独の相撲人生に打ち勝つ強靭(きょうじん)なメンタルを身に付け、何とか奇跡を起こしてほしいと願う人は少なくないはずだ。いずれにしても、このまま稀勢の里が沈んでフェードアウトしてしまうとしたら、あまりにも残念である。
臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2016年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ、2018年平昌)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
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