特集
災害危険地域に引っ越す人が絶えない根本原因は不動産業界の“不作為”:求められる情報公開の姿勢(3/3 ページ)
災害危険地域だと知らずに引っ越してしまう人が後を絶たない。根本原因はその情報を伝えない不動産業界の不作為にある。解決策はあるのだろうか?
不動産業界の閉鎖的な体質も問題
不動産総合データベースの導入には不動産業界が難色を示している。その代表的な存在が全国宅地建物取引業協会連合会や全日本不動産協会だ(ともに東京都千代田区)。この業界団体には高齢の幹部が多いのだが、その理由は各地域を代表する不動産業者の名誉職となっているためだ。不動産総合データベースを推進しようと国交省が旗を振っても、積極的に協力しようとしているとは言い難い。強固に反対しているというよりは、ITに詳しくないので正直ピンとこないのが実態ではないだろうか。
地域の災害リスクに関する情報を事前に顧客に開示するよう、宅建業法で義務化するのが根源的な解決策だと思うが、これら業界団体の強い反対が予想され、実現のハードルは高いとみられる。多くの人に災害情報を届けるために、まずは不動産総合データベースの早期運用を期待したい。
著者プロフィール
長嶋 修(ながしま おさむ )
不動産デベロッパーで支店長として幅広く不動産売買業務全般を経験後、1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「株式会社さくら事務所」を設立、現会長。「中立な不動産コンサルタント」としてマイホーム購入・不動産投資など不動産購入ノウハウや、業界・政策への提言を行なう。『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)、『不動産格差』(日本経済新聞出版社)他、著書多数。新著に『100年マンション 資産になる住まいの育てかた』(日本経済新聞出版社)。
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