フランス政府の思惑 ゴーン問題の補助線(3):池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
多くのメディアではルノー日産アライアンスを成功例と位置付けているが、筆者はそれに同意しない。提携以来、ルノーの業績は右肩下がりを続け、日産自動車が新興国で汗水垂らして作った利益を吸い込み続けているからだ。
欧州メーカーの実態
欧州のメーカーの技術開発トレンドを振り返って見ると、1990年代初頭には燃料電池こそが次世代技術であると確信してそれにまい進したが失敗。これはカナダのバラード・パワー・システムズ社の大げさな技術発表を真に受けて、一気に燃料電池に舵を切ったためである。しかし肝心のバラード社は2007年に自動車用システムに見切りをつけて事業を売却している。欧州系のメーカーはここで失敗したことがケチのつき始めだった。
いざ燃料電池が実用化できないとなった時に世界を見渡してみると、すでにトヨタ自動車がハイブリッドシステムを完成させて、完全に覇権を唱えている状態だった。後発でこれに参戦しても勝ち目はない。
そこで彼らが言い出したのが、「低速中心の日本ではハイブリッドは良いかもしれないが、長距離高速巡航型の欧州では利得が少ない」という必ずしもウソとは言えない言い分だった。そこで温暖化の主要因としてやり玉に挙がっている二酸化炭素(CO2)排出量の少ないディーゼルを主力に据えようとした。
しかしディーゼルは地球温暖化に寄与するCO2削減では優秀だが、大気汚染の原因となる炭化水素(HC)、煤(PM)、窒素酸化物(NOx)では劣等生だ。
EUの規制は、ごく最近まで大気汚染問題への規制基準が緩く、ただ欧州市場を日本車の進出から防衛するためにCO2排出量だけに極端なインセンティブをつけた結果、ディーゼル車が激増し、欧州都市部の大気汚染を深刻な状態に陥れた。
加えて、2015年に独フォルクスワーゲンのディーゼルゲート事件が発覚する。テストのクリア専用に作られた違法な特殊モードを駆使して試験をパスし、実際の走行では「公害を垂れ流しとバーターで性能の良さをアピールする」というインモラルな仕掛けだった。
本当に解決方法がないならともかく、マツダのディーゼルエンジンはNOxの排出を従来比で大幅に抑えることに成功している。やってもできないのではなく、やる技術がないか、やる意思がないだけだと言うことがはっきりするではないか。マツダに限らず、日本のメーカーはこうした点で非常に真面目で、社会に求められる責任に応えようとしている。そういう真面目さが欧州メーカーにはあまり感じられない。事あるごと環境意識の高さをアピールする姿勢と現実にやっていることのかい離をどう説明するつもりだろうか? 言うだけなら簡単で良い。
燃料電池、ディーゼルと続けて大失敗した欧州メーカーが慌てふためいて、おっとり刀で担ぎ出した次世代エースがEV(電気自動車)である。
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