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フランス政府の思惑 ゴーン問題の補助線(3)池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

多くのメディアではルノー日産アライアンスを成功例と位置付けているが、筆者はそれに同意しない。提携以来、ルノーの業績は右肩下がりを続け、日産自動車が新興国で汗水垂らして作った利益を吸い込み続けているからだ。

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ハイブリッドとEV

 しょせんは付け焼き刃でしかない。そもそも技術がない上に、高電圧を扱う免許を持った整備士が足りず、サービス網での整備もおぼつかない。そこはトヨタとは違う。トヨタは95年以来、着々とハイブリッドマーケットを育て、世界各国で1000万台以上を販売、あらゆる国々の過酷な状況下で実際にユーザーが使い、それを支えるサービス技術を構築してきた。そのビジネススキルのリアルさは伊達ではない。

ハイブリッドとEVは基本的に共通の技術だ。むしろエンジンとモーターの強調制御がいらない分EVの方がハードルが低い
ハイブリッドとEVは基本的に共通の技術だ。むしろエンジンとモーターの強調制御がいらない分EVの方がハードルが低い

 ハイブリッドとEVは別物だとする意見も散見するが、どちらもモーター、インバーター、バッテリーという3つの要素が構成要因である点では完全に同じだ。プリウスPHVはEVモードでの航続距離は60キロに達している。つまりハイブリッド車からエンジンを下ろし、バッテリー容量を上げればEVは簡単にできる。

プリウスPHVのバッテリー。コンパクトにまとめつつ高い冷却効率を実現するのは簡単ではない
プリウスPHVのバッテリー。コンパクトにまとめつつ高い冷却効率を実現するのは簡単ではない

 では、なぜトヨタがEVをやらないかといえば、高コストな上に台数がはけないというのが第一の原因だ。要するに買う人が少ない。もし大手メディアがいうように市場がEVを求めているにもかかわらず、メーカーがサボタージュして生産台数が足りないのだとしたら、長い納車待ちが発生するはずだ。だがそんな話は聞かない。つまりEVは残念ながら製品として売れないということになる。

 第二の原因は本格的なEVシフトに応えられるだけのバッテリーを生産できるサプライヤーがまだ世界のどこにもないからだ。それについてトヨタは17年秋にパナソニックと提携して30年までのバッテリー生産量を確約させた。然るのちに、30年にEVと燃料電池車(つまり内燃機関を持たないクルマ)の総計100万台を目指すと発表した。

 欧州のメーカーは電動化だのEVだのと威勢の良い発表を続けるが、具体的にバッテリー供給のめどが立っているとは言い難い。この点で最も進んでいるフォルクスワーゲンですら、中国政府から「中国でクルマを売りたいのならば、バッテリーセルは中国製を採用すること」とゴリ押しされて、中国製のバッテリーを採用することになっている。しかしながら、先に同じ条件を飲んだ米GMのEV『ボルト』は、社内の性能・安全基準を満たすバッテリーが調達できず、開発の無期限延期に追い込まれている。同じ轍(てつ)を踏まない保証はない。

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