働き方改革で目指したい職場環境は?:デジタルワークプレイス(2/2 ページ)
残業時間の短縮や労働生産性の向上など、「働き方改革」は企業目線で語られることが多く、「働かせ方改革だ」といった皮肉もある。そうではなく、「従業員の経験価値」を中心に置いた職場環境を目指すべきだという。
EXと効率性を両立させるストーリー
――デジタルワークプレイスの中心に来るEXを最終目標に設定した場合、これまでの施策と何が変わりますか。
一言で言うと、施策の広がりが違ってきます。例えば、生産性向上だけを目標に置く場合、付加価値の低い仕事をなくして、ロボットに置き換えればいいのですが、EXを高めようとすると、それだけでは終わりません。
従業員により挑戦的な仕事を与えて、達成感や成長実感が得られるようにするには、管理職(マネジャー)の役割が重要になり、大勢の部下を抱えるマネジャーほど仕事の負荷が増えます。労働時間を短縮しようと考えているならば、マネジャーの時間を大幅に減らし、その空いた時間を部下の育成や支援に充当できたほうがいい。そのように、「誰」の仕事を効率化して時間を減らすかを考え直さなくてはなりません。
それから、通勤時間の削減のため、会社に来なくてもいい。会議は電話やテレビで行うとなると、プロセスや業績の管理方法も変更する必要があります。自由な働き方を突き詰めていくと、成果主義に近づいていきますが、そこに社員を放り込み自己責任を求めるだけではEXが損なわれる可能性があります。自分たちの目指すゴールを意識しながら、働き方改革で生まれた時間をEX施策に使うというように、ストーリーを明確にすることも大切です。
――従業員経験価値(EX)と言うと主観的で捉えどころがありません。何をもってEX向上に有効な施策と言えるのでしょうか。
それについては、各社それぞれで定義していく必要があります。例えばNRIでは、写真やキーワードを用いてアイデアを触発しながら、自分たちにとって「実現したい場面」を語り合うワークショップを社内で試行してみました。参加者にはチームで強敵(=難しい課題)に立ち向かい、打ち勝つことに喜びを感じる傾向が見られたので、彼らのEXを実現するためには、多様な人との協業やナレッジ共有を促す仕組みがあると良いなど、今後検討すべき施策のヒントが得られました。
このように社内でも実験や学習を重ねながら、デジタルワークプレイスをトータルで設計・実装してEXを高める「働き方改革」を広く提案していきたいと思っています。
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