「働かない」ことばかり注目されている日本は大丈夫か?:ここが変だよ、日本の「働き方改革」(1/4 ページ)
15年間勤めた経済産業省を退職し、ベンチャー企業を起業した元官僚が語る「働き方」とは? 第1回は「働かない」ことを重視し過ぎている日本の働き方改革にメスを入れる。
2018年6月に「働き方改革関連法案」が国会で可決し、来年4月から施行されることが決まった。残業の上限規制、休息時間の確保、フレックスタイム制の拡充、残業代の引き上げなど、「働き過ぎ」を減らすことに重点が置かれた内容といえる。
実際には、新しい働き方を可能とする制度として、決められた勤務体系から解放される「高度プロフェッショナル制度」という成果型の働き方が認められたが、サービス残業を増やしかねないとの理由で年収や業種などかなり厳しい制限が掛かってしまった。
また、副業や兼業を促進するための取り組みとして、ガイドラインの整備は行われたが、それをどこまで認めるかはそれぞれの企業側に委ねられることとなり、どれだけ多くの人が副業や兼業ができるようになるかは全く分からない。
こうした背景もあり、現実に叫ばれている「働き方改革」は、新しい働き方を可能とする改革というよりも、「働き過ぎを減らす」という印象が強い。
ワーク・ライフ・バランスの重視、働き過ぎ規制という傾向が強まる中で、ほどほどの勤務でそれなりの給料を支払ってくれそうな会社への就職を希望する学生が増えているという話もよく耳にする。少子高齢化により人手不足が深刻化し、完全な売り手市場になっていることから、そう考える学生が増えてもおかしくはないだろう。
筆者が通商産業省(現・経済産業省)に入省した1999年当時、日本は米国に続くGDP第2位の経済大国であり、米国:日本:中国=約9:4:1という経済規模であった。しかし、2009年にGDP第2位の座を明け渡してからは米中との差は広がるばかりで、現在では米国:日本:中国=約20:5:12となった。今の日本はもはや米国の4分の1、中国の2分の1にも満たない経済規模である。
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