「情熱は大事、ただしそれだけではうまくいかない」 元官僚のベンチャー社長が持つ覚悟:rimOnO・伊藤慎介社長が語る(1/4 ページ)
経済産業省を辞めて起業したrimOnOの伊藤慎介社長。国家プロジェクトではイノベーションは起きないと語る同氏の挑戦に迫った。
東京・日本橋のほど近く、問屋が軒を連ねる小伝馬町。ある裏通りを歩くと、風情感じる建物の1階窓から水色のクルマが顔をのぞかせている。rimOnO(リモノ)というベンチャー企業が開発した超小型電気自動車である。
全長2.2メートル、全幅1.0メートル、全高1.3メートルというコンパクトなサイズ感に、布製のボディが特徴だ。この会社の社長は元経済産業省の伊藤慎介氏。新卒から15年間勤めた経産省を飛び出して、2014年に創業した。
16年5月にプロトタイプ「rimOnO Prototype 01」を完成させ、多方面から脚光を浴びたが、今、大きなカベに直面している。
いまだ国の法制度が整備されず、このクルマを公道で自由に走らせることができないのだ。顧客からのニーズはあるのに、売りたくても売ることはできない。
市販できない期間が長引けば、当然、投資回収のめどが立たなくなるため、エンジェル投資家などの出資者に頭を下げ、今年春にクルマの開発を休止した。現在は、クルマや鉄道、バスなどあらゆるモビリティを連携して移動の利便性を高めるサービスである「MaaS(Mobility as a Service)」やスマートシティなど、小型電気自動車にかかわる周辺領域の推進に注力し、近い将来の実用化、ビジネス化に向けて日夜奮闘している。
「これをやりたいという情熱はとても大事です。けれども、それだけでは物事はうまくいかないことに気付かされました」
まさに今が正念場で、かつてないほどの苦境に立たされているが、伊藤氏の表情は決して悲観的ではない。そのモチベーションの源泉とは何なのか?
関連記事
- プロ野球選手からビジネスマンに “生涯現役”貫く江尻慎太郎さんの人生
2001年にドラフトで日本ハムファイターズに入団。その後、横浜ベイスターズ、福岡ソフトバンクホークスでプロ野球選手としてのキャリアを過ごした江尻慎太郎さん。現役引退後、彼が選んだ道はビジネスマンだった。江尻さんの仕事観、人生観に迫った。 - 天才プログラマー・佐藤裕介は限界を感じていた――知られざる過去、そこで得たメルカリ対抗策
2018年2月に誕生したヘイ株式会社。代表取締役にはプログラマーの佐藤裕介さんが就任した。佐藤さんはGoogle出身で、フリークアウト、イグニスの2社を上場に導いた人物。そんな彼がheyを設立したのは、順風満帆に見えるキャリアの陰で抱えていた、自分のある「限界」を突破するためだった。 - ITエンジニアからの転身 小さな漁港に大きな変化を生んだ「漁業女子」
三重県尾鷲市の須賀利で漁業を始めた、東京の居酒屋経営会社がある。そのスタッフとして漁業事業を引っ張るのが田中優未さんだ。元々はITエンジニアだった田中さんはなぜ今この場所で漁業にかかわっているのだろうか……? - 女子アナから働き方を変えた前田有紀さんがいま伝えたいこと
テレビ朝日のアナウンサーとして活躍した前田有紀さんは、入社10年という区切りの年に退社。そこからフラワーやガーデニングの世界に飛び込んだ。彼女自身の歩みを振り返りながら、いま、そしてこれからをじっくりと語ってくれた。 - 「社員を管理しない、評価しない」 個人と会社の幸せを追求した社長が心に決めたこと
「ワーク・ライフ・バランス」ではなく「ワーク・アズ・ライフ」。こうした言葉を語る人たちが増えている。TAMという会社は、社員のワーク・アズ・ライフを「仕組みで」可能にしている。社長にその本質を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.