天才プログラマー・佐藤裕介は限界を感じていた――知られざる過去、そこで得たメルカリ対抗策:2社を上場に導くも(1/6 ページ)
2018年2月に誕生したヘイ株式会社。代表取締役にはプログラマーの佐藤裕介さんが就任した。佐藤さんはGoogle出身で、フリークアウト、イグニスの2社を上場に導いた人物。そんな彼がheyを設立したのは、順風満帆に見えるキャリアの陰で抱えていた、自分のある「限界」を突破するためだった。
カード決済を簡単にする「Coiney」と、オシャレなネットショップが2分で開設できるサービス「STORES.jp」が2018年2月に経営統合して生まれた新会社、ヘイ株式会社(以下、hey)。「こだわりのある作り手」を決済とEC運営で支援するこの会社の代表取締役にはプログラマーの佐藤裕介さんが就任しました。
佐藤さんはGoogle出身、株式会社フリークアウト、株式会社イグニスの2社を上場に導いた、34歳にして一流の経営者。しかし、そんな彼がheyを設立したのは、順風満帆に見えるキャリアの陰で抱えていた、自分のある「限界」を突破するためだったそうです。
その限界を超えるため、佐藤さんが答えを求めて訪れたのは、ある「意外な場所」。そこで彼の内面に起きた変化、そこから生まれたheyの「Just for fun.」な組織づくりとは――。佐藤さんが知られざる過去を明かしてくれました。
ヘイ株式会社 代表取締役社長 佐藤裕介。2008年Googleに入社し、広告製品を担当。10年末、COOとしてフリークアウトの創業に参画。また株式会社イグニスにも取締役として参画し、14年6月にはフリークアウト、イグニスともにマザーズ上場。17年1月フリークアウト・ホールディングス共同代表に就任。エンジェル投資家としても活動。18年2月1日付けでheyの代表取締役社長に就任
天才プログラマー・佐藤裕介が感じた「限界」
――hey設立を考え始めた理由を教えてください。
それまで自分がやってきたことに限界を感じたからです。
元々、フリークアウトという情報技術の会社を経営し、そこではWeb広告を見たユーザーの情報――年齢、性別、趣味嗜好などから、そのときユーザーが求めているものを推計するシステムを開発していました。
会社としては急成長していたんです。創業して3年半で上場もした。だけど、そのころから、「自分がやっていることって何なんだろう」と、その意味について考えるようになりました。
――限界を感じる出来事があったのですか?
きっかけは、2012年ごろからディープラーニングの技術がグッと前進したことや、上場後にサービスのモバイル化へと会社の舵を切ったことです。
それまでは、ユーザーの広告クリック率を0.3%から0.4%に高めるなど、目の前の小さな数字目標を人力でひたすらに追求していました。しかし、ディープラーニングの技術を取り入れ始めたことで、クリック率やコンバージョン率の予測精度が格段に上がったり、メディアのフォーマットがPCからスマートフォンへと切り替わっただけで、クリック率が3〜4倍になったり……。それはもう衝撃でした。
こうした事実を少し引いてみたときに、広告ターゲティング技術のような、僕がこれまでやってきたものは、たとえ自分がそれ一筋でやってきたものだとしても、新しい技術によって一発で覆されてしまうんだって。それを機に、フリークアウトを経営する上で自分がいま何に集中していくべきか、悩むようになったんです。
――世間から見れば、2社を上場させたプログラマーとして順風満帆に見えていた陰で、そんな葛藤があったんですね。
さらに技術的なことだけなく、持続的な成長にコミットすべき上場企業としては特に、「その事業やサービスは人々を幸せにしているのか」って、ものすごく根本的な問いと向き合い続ける必要があるじゃないですか。
そう立ち返ると、自分が磨き込んでいる広告の技術が、この先もずっと持続可能なものなのか、そして誰かを本当に幸せにしているのか――その問いに対して、自分ははっきりとした答えを持っていないことに気が付いたんです。
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