ゴーン事件を「西川の乱」だと感じてしまう、これだけの理由:スピン経済の歩き方(5/7 ページ)
カルロス・ゴーン前会長の逮捕で、日本中に衝撃が走った。有価証券報告書で役員報酬の一部を少なく記載した容疑で逮捕されたわけだが、この事件について、筆者の窪田氏は「西川の乱」ではないかと見ている。その理由は……。
「組織の外」に向き合っていない
では、なぜ聡明な西川社長がこんなリスキーな発言をしたのか。真意はご本人しか分からないことだが、筆者にはやはり「内向き」ゆえの発言ではないかと感じてしまう。
ゴーンとケリーのコンビが「首謀者」だと断定することは、後々大きな問題に発展する危険性が大きいが、巨大組織のガバナンスという観点で見れば、それほど悪い話ではない。悪いのはあの不良外国人たちであって、パクられていない西川社長たちはクリーンなので、皆さんご安心くださいね、という強烈なメッセージーになるからだ。
(3)の『4回目の検査不正発覚も姿を見せず』に関しても、これまでのケースと同様に「内向き」なスタンスがにじみ出ている。
ご存じのように先週、日産で昨年秋から数えると4回目となる検査不正が発覚した。しかし、その謝罪会見に西川社長はあらわれることなく、国内生産と品質保証の各担当役員が登場をした。
9月に一連の検査不正ドミノの「終結」を宣言してわずか3カ月にそれが大うそになってしまったことに加えて、今回は「ブレーキ」というクルマの安全に直結する部分であり、経営責任は重い。発覚のきっかけとなったスバルの会見でも、中村知美社長が深く頭を垂れていることを踏まえれば、社長が出なくていけない場であることは間違いない。
にもかかわらず、西川社長は対応しなかった。そこでまず思うのは、「経営責任を追及されて火だるまになる」ことを避けたのではないかということだ。
西川社長については冒頭で述べたような、ゴーン氏の報酬に関する「サイン問題」が出ていた。検査不正の会見とはいえ、当然そこは根掘り葉堀りと尋ねられるし、週刊ダイヤモンドやウォールストリートジャーナルの「クビ報道」の前兆も当然、つかんでいただろうから、会見でそれを直接ぶつけられてオロオロする恐れもある。そうなれば、ルノーや社内の「反西川」は一気に勢いづく。このような危険性を回避したのかもしれない。
いずれにせよ、本来ならば社長が出るべき場面に出ないことは、その社長は、社会や顧客という「組織の外」よりも腐心しなくてはいけない、何か大きな問題を「組織内」に抱えているということなのだ。
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