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マツコが絶賛した予約殺到の「できたてポテトチップ」! “神がかったうまさ”の舞台裏に迫る中小企業が大企業に勝つ方法(1/6 ページ)

1953年創業の小さなポテトチップメーカー菊水堂。同社の「できたてポテトチップ」はマツコ・デラックスが絶賛したことで話題となった。そのおいしさはどのように生み出されているのか。舞台裏に迫った。

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 大手のポテトチップメーカーとは競争せずに、「できたて」をキャッチフレーズにして独自のブランドを築いている菊水堂(埼玉県八潮市)。2015年3月放送の「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)で、マツコ・デラックスがこのポテトチップを味見したのをきっかけに、異例の大ヒットを果たした。だがポテトチップの業界は、カルビーや湖池屋など大手企業が市場を席巻しているのが実情だ。

 大手企業と差別化し、中小企業が生き残る商品戦略はどこにあるのか。菊水堂の2代目社長、岩井菊之氏(61歳)に聞いた。

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菊水堂の「できたてポテトチップ」(写真は同社提供)
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岩井菊之(いわい きくじ) 1957年東京都生まれ。80年に東京薬科大学卒業。薬剤師の資格を取得。89年に東京製菓学校洋菓子科卒業。日本メルク万有(現在のMSD)に医薬情報担当者(MR)として勤務した後、菊水堂に入り、2000年4月から父親の清吉さんの後を継いで社長に

「できたて」へのこだわり

 ポテトチップの市場は、カルビーと湖池屋の2社で9割のシェアがあり、圧倒的な寡占状態が続いている。その中で菊水堂はポテトチップメーカーとしては6位か7位でシェアはわずか0.5%だ。このため、大手と競争しても販売量では勝ち目がない。岩井社長は「大手メーカーとは仲が良く、『共存共栄』の立場でお付き合いしている」と話す。昨年、じゃがいもの最大の産地である北海道が異常気象で大不作になったときは、大手からじゃがいもを融通してもらったこともある。

 菊水堂の売り上げ構成は、生活協同組合向け、ネット通販、高速道路サービスエリア向けがそれぞれ3分の1ずつで、年商は約5億5000万円だ。ところが11年3月の東日本大震災で商品を卸していた東北地方の土産物店が激減し、売り上げも落ち込んだ。岩井社長の脳裏には「撤退」という文字もよぎり始めていた。

 経営難に陥っていた小さなメーカーを一躍全国銘柄にしたのが、15年3月に菊水堂のポテトチップを試食したマツコ・デラックスが、テレビカメラの前で絶賛した「イモの香りがする」「お母さんの手作りみたいだ」という激賞コメントだった。岩井社長によると「その日のうちにネット注文が殺到、とても応じられないほどの注文が舞い込んだ」という。

 岩井社長のこだわりは、あくまで「できたて」商品を消費者に届けることだ。そして安心はもとより「子どもが食べておいしい商品であるべきだ」という、岩井社長が父親から継承した強い信念がある。

 大手メーカーの商品は、製造してから売り場に並ぶまでに最低1週間はかかるという。大量生産、大量販売していると流通に時間がかかるので、そうならざるを得ないのだ。しかし、菊水堂は「少品種少量生産」のため、小回りを利かすことができ、1〜2日で届けることができる。これが同社の最大の売りになっているのだ。

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菊水堂の外観。住宅街の一画にある
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1日8000キロのじゃがいもがポテチになる。大手メーカーの塩味ポテチは塩以外に昆布や旨味調味料などを使っているが、菊水堂は塩以外は使わない
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