「ジジイの当たり年」だった2018年 権力の壁を壊す“見えないモノサシ”を持とう:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
2018年はスポーツ界でパワハラが相次ぎ問題になるなど「ジジイの当たり年」。さまざまな業界で「ジジイの壁」の高さとその末路の悲惨さを痛感した。今なお権力に溺れるジジイの高い壁をぶち壊すために、私たちはどのように行動するべきだろうか。
あっという間にまた、1年が終わります。ああ、早い。ホントにあっという間です。
「時間の心理的長さは、年齢に反比例するため、生きてきた年数によって、主観的に記憶される時間の長さが変わる」
これは体感的時間の謎を説明する「ジャネの法則」を提唱した、19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネの言葉です。
「生きてきた年数」とは……何ともグッとくるお言葉ですが、1歳の1年を365日とすると、50歳の1年は体感的にはその50分の1になるので、1歳の365日は50歳にとっては約7日となります。確かに子供の頃の1年って、ものすごく長かったですよね。といっても、その記憶もかなり薄れていますが(苦笑)。とはいえ、どんなに体感的時間が激減しても、365日は365日。「あっという間」を振り返ってみると、「あれ? それ今年だっけ?」と雨後のたけのこのようにさまざまな出来事が記憶の箱から芽を出します。
定額働かせ放題プラン、高プロ(高度プロフェッショナル制度)といった言葉は「働かせ方改革」(あえてこう呼びます!)でクローズアップされましたし、自民党の二階俊博幹事長の「幸せの国発言」や、杉田水脈議員の「LGBT生産性発言」など、政治家の資質を疑う発言もありました。「おっぱい触っていい?」という、書くだけで吐き気がするような官僚のお偉いさんのセクハラ問題、アメフト、ボクシング、体操などスポーツ界のパワハラ問題。女性や2浪以上の学生に不利な得点操作をした医学部入試問題、障害者水増し雇用、バスケ留学生の暴行事件、外国人技能実習生の奴隷化問題……etc.
国会では「働き方改革法」「出入国管理改正法」といった問題ありあり法案が成立した一方で、「パワハラ防止義務」が法制化されるなど、小さな一歩を踏み出した出来事もありました。
ただ、過労死や過労自殺の問題、女性の非正規の低賃金問題、中小企業や零細企業の長時間労働など、本来であれば一刻も早く解決すべき問題がなおざりにされ、残念でなりません。
そして、何より今年目立ったのは「ジジイ」!
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