「ジジイの当たり年」だった2018年 権力の壁を壊す“見えないモノサシ”を持とう:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
2018年はスポーツ界でパワハラが相次ぎ問題になるなど「ジジイの当たり年」。さまざまな業界で「ジジイの壁」の高さとその末路の悲惨さを痛感した。今なお権力に溺れるジジイの高い壁をぶち壊すために、私たちはどのように行動するべきだろうか。
「ジジイの末路」の悲惨さを痛感した1年
財務省・福田淳一前事務次官のセクハラ騒動、日大アメフト部の内田正人前監督、日本ボクシング連盟の山根明前会長、日本レスリング協会の栄和人前強化本部長、自民党の二階幹事長、さらには杉田議員、日大チア部の女性監督など、2018年は「ジジイの当たり年」といっても過言ではないくらい、さまざまな業界でジジイの愚行が表面化。「ジジイの壁」の高さと、「ジジイの末路」の悲惨さを痛感させられた1年でした。
「おい! 何度も何度もジジイと言うな!」と、口をとがらせている人もいるかもしれませんが、ジジイとは……
「変化を嫌い、自分の保身だけを考え、『会社のため』『キミのため』と言いながら、自分のために既得権益にしがみつき、属性で人を判断し、『下』の人には高圧的な態度をとる人々」のこと。
“ジジイ”とはジジイ的なるものの象徴で、決しておじさんのことを指しているわけではありません。女性のジジイもいるし、若いジジイもいるし、50代でもジジイじゃない男性はいます。ただ、日本の組織が圧倒的な男社会なので、ババアではなくジジイと呼んでいるのです。
しかしながら、そんなジジイたちも、きっと昔は部下から慕われる上司で、それなりの結果も出し、一目置かれる存在でした。ところが、「権力」という階層組織がもたらす最高の褒美を手に入れたことで、変貌してしまったのです。
「権力は人を堕落させる」と言われる通り、権力には人間の心理を変える作用があることを、世界中の研究者たちが検証してきました。ここでの権力とは、社会的な地位の高さ、経済的優位性(高収入)、階層社会における高い地位などです。権力を持つ人は、さまざまな褒美をたやすく手に入れることが可能です。これが、いわゆる「既得権益」と呼ばれるものです。
「自分には権力がある」と認知する権力感が高まると、自分が他者に及ぼす影響力の強さに酔いしれ、無礼な言動をしたり、不正を働いたりする傾向が強くなります。例えば、高級車を運転している人は歩行者に道を譲ることが少なくなったり、より高い報酬を勝ち取るために交渉の場でうそをついたり、不正をしたりする確率が高まり、周りは権力者のそういった言動を見抜けない傾向が高まるとされているのです。
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