「ジジイの当たり年」だった2018年 権力の壁を壊す“見えないモノサシ”を持とう:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
2018年はスポーツ界でパワハラが相次ぎ問題になるなど「ジジイの当たり年」。さまざまな業界で「ジジイの壁」の高さとその末路の悲惨さを痛感した。今なお権力に溺れるジジイの高い壁をぶち壊すために、私たちはどのように行動するべきだろうか。
ゴーン氏の経営手腕と「権力」
そういえば、私的な投資の損失を会社に付け替えるなどの行為をしたとされ、特別背任事件で再逮捕された、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏も、「うそと不正」が疑われていますね。ゴーン氏は調べに対し「ロビー活動などに対する正当な報酬だ」と容疑を否認しているようですが、私的な投資損失を日産に付け替える際に「自分の名前を出さずに付け替えをしようとした疑いがある」と報じられています。
真相はまだ明らかになっていませんが、ゴーン氏が“ミスターコストカッター”の異名を持つ名経営者と評された裏側には、日産リバイバルプランでリストラされた2万1000人の従業員、半分に減らされた下請企業、さらにはリーマン・ショックでリストラされた2万人の従業員が存在します。
悲しいかな、人は権力やカネなどの“外的な力”を手に入れれば手に入れるほど、それを偏重するようになり“内的な力”を高めることをおろそかにしがちです。内的な力とは、誠実さや勇気、謙虚さや忍耐といった人格の土台となる力です。
内的な力のない人は「自分」が法律になり、下の人たちは権力者に服従的な態度を取る傾向が強まり、依存度を高めます。おまけに、絶大な権力を持つ“大ジジイ”の影響力は蜘蛛の巣のごとく組織に広がっているので、大ジジイのおこぼれに預かる“中ジジイ”、“小ジジイ”が群がり、組織は内向きになり、異物が入り込まないように「ジジイの壁」がつくられていくのです。
6月22日に公開した記事「レスリング栄氏が溺れた「権力の罠」 根源にある“構図”とは」で書いた通り、人間には「権力に溺れる欲」もあれば、「権力にすり寄る欲」もある。「自分に何かをもたらしてくれるだろう」という期待に人は魅了されます。そして、権力が1人に集中し、組織全体が権力者に「依存」する構図になったとき、権力は圧倒的な「悪」と化していくのです。
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