「ジジイの当たり年」だった2018年 権力の壁を壊す“見えないモノサシ”を持とう:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
2018年はスポーツ界でパワハラが相次ぎ問題になるなど「ジジイの当たり年」。さまざまな業界で「ジジイの壁」の高さとその末路の悲惨さを痛感した。今なお権力に溺れるジジイの高い壁をぶち壊すために、私たちはどのように行動するべきだろうか。
「ジジイの壁」を崩壊させるために
何だか書いているだけでうんざりしてきましたが、18年は「おかしいことをおかしいと言う」川を渡り船を焼く覚悟を持った、勇気ある人たちの行動により、ジジイの悪事が公になり、一部のジジイが組織から切り離されたことをうれしく思います。
もちろん勇者たちによって地位を追われたジジイはごく一部で、何事もなかったように、今なお涼しい顔で影響力を持ち続けている人たちはいますが、少しは変わるのかな、と期待しているのです。かつてベルリンの壁が崩壊したように、長い道のりではありますが、「ジジイの壁」も崩壊するのではないか、と。
そのために私たちができるのは、内的な力を磨き続ける努力を怠らないこと。それはお金という有形の資産に翻弄(ほんろう)されるのではなく、無形の資産(内的な力)に投資することです。目の前のことをきちんとやることに加え、学ぶ気持ち、他者への思いやりを忘れず、立ち止まること、ぶつかること、変わることを恐れない覚悟です。
それは自分の弱さ、ふがいなさと正面から向き合い、「自己受容(self acceptance)」というリソースを手に入れることでもあります。
自己受容とは、ナルシシズム的な自己愛や過剰な自尊心とは異なり、自分のいいところも悪いところもしっかりと見つめ、自分と共存しようとする感覚。平たく言えば「自分のものさし」を大切にすることです。
少々、説教くさくなってしまいましたが、「ジジイとりがジジイにならぬよう」気を付けなければなりません。かく言う私も例外ではありません。19年も「おかしいことをおかしいと言う」勇気で言葉をつづっていきますので、お付き合いいただければうれしいです。
では、良いお年を!
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)
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