ダイナースが生き残るために、何をすればいいのか:クラブだったはず(2/4 ページ)
ダイナースはクレジットカード会社ではない。クラブだったはずだ。ダイナースが生き残るためには、どうすればいいのか。社会的信用のある限られたメンバーだけの上質のプレミアムクラブとなるような事業再認識が必要ではないか。
「ダイナース(晩餐)クラブ」という名は、通貨交換の面倒な海外などでも、心ゆくまで満足できる、きちんとした食事をしたい、という会員を希望を示すものであり、そのために会員証にクレジット機能が付帯しただけであって、後払いのクレジットカードというのなら、それ以前から他にもあった。近頃の新規会員には、使える店が少ない、などと文句をつける向きもあるようだが、もともとはミシュランの星付きと同じで、ダイナースクラブに加盟できるレストランというのは、相応以上の店と客の水準を証明するものでもあった。
ひとことで言えば、食事の味はもちろんながら、エスタブリッシュは、『GOETHE』の読者のような下卑た若手の成金連中、それにぶら下がっている「美人秘書」とかいう小うるさい馬鹿娘たちと食事でまで店を同じくしたくないから、いつでもどこでも好みの店を選べるように、自分で高い会費を払ってわざわざクラブに入っていた。
にもかかわらず、ダイナースそのものが、自分たちの事業定義を誤り、エスタブリッシュがもっともかかわりたくないリスキーなやつらを中に引き込んだ。かつて会員の交流と休息と旅先での情報交換の場だった街中ラウンジは、世界中、のきなみ閉鎖。空港ラウンジも、他社のプレミアムカードと一緒になって、冷蔵庫の飲み物をごっそり強引に持ち出すような連中が跋扈(ばっこ)。もはやかつての静けさは見る影もない。
クラブは、趣味趣向を同じくする者の社交組織で、ゴルフなどがよく知られたところだろう。近代においては、19世紀の後半、上流貴族の社交界とは別に、工場労働者や植民地成金とも異なるアッパーミドルクラスが成立し、かれらの社交場が必要になったことから生まれた。彼らは、まさに教授・医師・弁護士、実績のある企業の経営者や管理職など、レスペクタビリティ(きちんとしていること)に基づく階層。
カネの力だけで言えば、確かに成金にはかなわない。だが、堅実な定職に就いており、信用リスクは限りなく低い。また、育ちの悪い成金が持ちえない、幼少からの熟成を必要とする、落ち着いたクラシックな文化教養を趣味趣向としており、カネに任せて暴れ回る連中にジャマされない静かな場としてクラブを求めた。
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