「佃製作所はやっぱりブラック企業」と感じてしまう、3つの理由:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
ドラマ「下町ロケット」の特別編が放映され、14.0%という高視聴率を叩き出した。多くの人がこのドラマを見て胸が熱くなったかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。ドラマの内容を考えると、「日本の未来に不安を感じる」という。どういう意味かというと……。
「ブラック企業VS. 外国人労働者」というトラブル
昨年、参院選対策のためにゴリ押しされた改正入管法によって今年から、日本の若者にそっぽを向かれている不人気業界に「外国人労働者」が大量に注入される。
これで喜ぶのは、「外国人労働者」のことを、低賃金で文句を言わずキビキビと働く部品くらいにしか考えていないブラック企業である。だが、外国人労働者も人間なので当然、賃金や待遇が悪ければ騒ぎ出すし、パワハラやセクハラには被害の声を上げる。
つまり、来年あたりから日本国内で「ブラック企業VS. 外国人労働者」というトラブルが一気に増えていくということなのだ。
そこで「下町ロケット」の出番だ。日本の労働文化を知らぬ外国人労働者に「佃製作所」を見せる。日本では、従業員は社長と同じ「夢」をかなえるために働いている。何よりも「夢」が大切なので、賃金や待遇は二の次で、サービス残業や休日出勤も「自分のため」にやらなくてはいけない――。
そのあたりの常識をよく理解したうえで、それでもどうしても日本の人手不足業界で働きたいという外国人だけに来てもらえれば、労使トラブルも未然に回避できるのではないか。
安倍政権が言うには、外国人労働者に来てもらわないと日本が滅びるらしい。ということは、いずれ劇中の「佃製作所」にも外国人技術者がわんさかやって来るということだ。
中国やベトナムからやって来た労働者に、佃航平はいったいどんな精神論を振りかざすのか。そして、彼らは佃航平の「夢」に賛同して、日本人社員のように文句ひとつ言わず、長時間労働に従事してくれるのか。
そんなリアルな「下町ロケット」もぜひ見てみたい。ま、視聴率はかなり悪いだろうけれど。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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